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第10話
いつもの様に宗方の後ろに乗り、バイクを走らせていると、目の前に丸い何かが転がってきた。
焦った宗方は慌ててブレーキをかけ、その勢いで天馬は宗方の背中に思い切り顔面をぶつけた。
「ぶっ!」
「すいません、頭……!大丈夫ですか?」
宗方が振り返る。
「どうした?」
ぶつけた顔を天馬は抑える。
宗方は、バイクを停めるとスタンドを立て降りた。天馬は宗方の行動を黙って見ていると、茂みに入って行き、なにやらガサゴソとして出て来ると右手にバスケットボールを掴んでいた。
その時、左手にある公園から小学生の男の子が三人走ってきた。
「あ!お兄さん、ありがとう!」
「ほらよ」
宗方はボールを渡してやると、公園の中に目を向けた。天馬も公園の中に視線を向ける。バスケットリングが目に入り、どうやらそこにはストバスのコートがある様だった。そこで子供たちはバスケをしていたのだろう。
ボールを渡してやるが、少年たちはコートを見るだけで動こうとはしなかった。
「どうした?やらないのか?」
宗方は少年たちを見下ろし、言った。
「やってたんだけど、コート取られちゃって……」
少年の視線を追えば、若い男たちがコートを使っていた。
「ここ、ナイター点くから、それまでやらしてくれって頼んだんだけど……」
「オレたちはどうせ、暗くなる前には帰らないと行けないのに……」
なぁ?と、少年たちは顔を見合わせている。
宗方はコートの方に目を向けると、
「オレが話してきてやるよ。頭、少し待っててもらっていいですか?」
そう言ってライダースを脱ぎ、それをバイクにかけた。
「あ?まぁ、いいけど……」
何をするつもりなのか気になり、天馬もバイクを降り宗方と少年たちの跡を追った。
コートには、五人の二十才くらいの柄のいいとは言えない青年たちがコートを使っていた。
「なぁ、あんたら」
宗方がその男たちに声をかけた。
「なんだよ」
ゲームを中断され、不服そうな顔を浮かべている。
「この子たちに、コート譲ってやってくれよ」
「ああ?」
「ここはナイター点くだろ?あんたらはナイター点いてからやればいい。この子らの時間は限られてんだ」
そう言うと、いきがった様子で男たちは宗方に近寄った、が、宗方の上背に一気に顔を青くした。
「で、でけえ……」
「なんか見た事あるような……」
男たちは顔を見合わせて、コソコソと
話している。
天馬は近くのベンチに腰を下ろし、タバコを燻らせその様子を見ていた。
(別に、ルシファーだって言っちゃえばいいのに……)
おそらく、宗方のことだ。脅すようなことはしたくなかったのだろう。
「オレたちが先に使ってたんだ!」
「嘘だ!僕たちが先に使ってたんだよ!」
少年の一人が言うと、
「う、うるせー!クソガキ!」
そう少年たちに怒鳴った。
ふと、少年が持っているボールを見ると、貸して?そう言ってボールを手にすると、ボールを右に左に移動させた。
「あんたら、バスケかじってんだろ?じゃあ、バスケで勝負して、オレが勝ったらコートこの子たちに譲ってやってくれるか?」
「はぁ?背がちっと高いからって、バスケできると思ってんのかよ?」
「いいぜ、やってやろうぜ!素人に何ができるってんだよ!」
(素人……じゃないわなー。名門魁星のバスケ部スタメンだったんだからよー。面白くなってきた……)
天馬は心の中でほくそ笑んだ。
コートに立つと、
「1on1にしてやるよ」
一人が言って、宗方の前に立った。
「いや、そっちは二人……三人でもいい」
男たちはギョッとして、顔を見合わせている。そして大声で笑い声を上げた。
「マジで言ってんの⁈」
「ああ、マジだけど。代わりにオフェンスもらうから」
「ふんっ、三人相手に3ゴール取ったら譲ってやるよ」
「いいから、早くボール寄越せ」
珍しく宗方から苛立ったオーラを感じた。
(目が……いつもと違う?)
宗方が受け取ったボールを片手で掴んでいる。
天馬は試しに片手でボールを掴んでみた……当然、自分の手の大きさではこんな大きなボールを掴むことなどできない。
(どんだけ手、デカイんだ……)
191センチの宗方が低く腰を落とした。様子を伺うように、ボールをゆっくりとついている。二人が宗方の前に立ちはだかり、一人はリング下に立っていた。
次の瞬間、宗方は腰を低くしたまま男の左側を抜いた。
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