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第19話

それがきっかけとなり、スカルズとの小競り合いが暫く続いた。 宗方は、いつも以上に天馬の側から離れることなく終始、天馬を守るように隣にいた。 「もう、一ヶ月近く続いてて、嫌になりますね」 カウンターのスツールに座っている一が両手を頭の後ろにあて、ギコギコとスツールを揺らした。 「あそこの頭の斎藤はねちっこい性格してるからなー」 市村が苦笑を浮かべる。 「そろそろ、決着つけるかー」 天馬は言うと、ルシファーの面々が天馬を見る。 「一気に片付けちまおう」 ニヤリと笑い、天馬はそう言った。 スカルズの溜まり場である、元中華料理店だったという建物にルシファー全メンバーが赴いた。 「行け」 天馬がそう言うと、宗方たちは中に突っ込んで行った。 窓ガラスが割れ、中にからスカルズの男たちが逃げるように飛び出して来る。それを一たちが追って出てくる。 (しゃーねー、手伝ってやるか) 天馬は気怠げに歩み寄り、乱闘の輪に加わった。 天馬はあまり喧嘩は好きではなかった。弱いわけではないが、とにかく面倒なのが嫌いで、喧嘩もただ面倒くさいとしか思わなかった。ルシファーのメンバーが喧嘩好きが多い為、自分が出張るまでもない、そう思っていた。 「早乙女!」 スカルズの頭である斎藤が、天馬の姿を見つけると殴りかかってきた。 「おまえさー、しつこいんだよ」 天馬は斎藤の拳を避け、斎藤の足に自分の足を引っ掛けると斎藤は勢い良く顔面から転んだ。 「かっこわるー」 クスクスとバカにしたような笑いを天馬は洩らす。 「て、てめー……」 「頭!」 宗方の声が聞こえたと思うと、背中に激痛が走った。 「ぐっ……!」 苦痛に顔を歪め、後ろを向くと警棒を振り下ろす男が目に入った。 天馬はその場に崩れ落ちると、何度も警棒で殴られた。なんとかやり過ごそうと、頭を抱え痛みに耐える。 その時、大きな背中が見え、振り下ろされた警棒を右腕に受けた瞬間が目に入った。 (宗方……そんなの食らったら……バスケできなくなんだろ……) 薄れそうな意識の中でそんな事が頭によぎった。 目の端に斎藤が逃げようとしている姿を捉え、 「宗方……!斎藤追えよ……!」 宗方はその言葉に、 「でも……!」 「いいから、追え……!」 だが、宗方はそこから動こうとせず、警棒を手にした男を殴りつけていた。 チッと天馬は一つ舌打ちをすると、 「一……!斎藤追え!」 一は一度こちらに目を向けると、逃げる斎藤の跡を追った。 その後、斎藤を捕えると嫌というほど痛めつけ、斎藤が命乞いをするように土下座をした。ルシファーに二度と手を出さないことを条件に解放した。 そうして、スカルズとの抗争に決着がついた。 宗方が天馬の目の前で両膝を付いている。 その顔は、不安と戸惑いに満ちている。 天馬の蹴りが宗方の左肩に勢い良く入ると、大柄な宗方がぐらつき尻を地面に付けた。 「てめぇ、なんであの時オレの言葉無視した」 「……すいません……頭を守ろうと……」 「オレを守る?おめー、オレを舐めてんのか」 そう言って、もう一度左肩を蹴った。胸ぐらを掴み、顔を目の前まで持ってくるとギラリとした目を向けた。 「てめーに守られるほど、オレは弱くねえんだよ。だてに六代目頭背負ってねーんだ」 「……」 宗方は目を合わすことなく、されるがまま天馬に揺すぶられてる。 宗方が右腕で警棒を受けた光景が浮かぶ。 「おまえ、やっぱ向いてねーんだよ」 その言葉に宗方の目が見開く。 「な……にが、ですか……」 「うちだよ。こういう世界が!大人しくバスケやってたほうがいいんじゃねーか?」 天馬は胸ぐらを掴んだまま、 「おまえ……やめろ、ルシファー」  そう言った。 周囲のルシファーの面々がギョッとしたように二人を見ている。 「嫌です」 「やめろ」 「……やめません」 宗方は意思の強い眼差しを天馬に向け、唇を噛んでいる。 天馬はその顔に拳を叩き込んだ。 宗方が倒れると、 「しばらく、顔見せんな」 そう言って天馬はその場を去り、久しぶりにゼファーのハンドルを握った。 あの時、宗方がなんの躊躇いもなく右腕で自分を庇ったことが頭から離れなかった。もし、その腕に万が一のことがあれば、バスケができなくなってしまう、そう頭に過ぎった。 自分を守る、その言葉も癪だった。自分は、他人に守られるほど弱いわけではない。確かに、宗方は自分の用心棒のような存在ではあった。だが、宗方はまるで自分が弱い人間であるような口振りに、腹が立ったのも事実だった。

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