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第26話
天馬の鼻の奥がツンとし、涙がもう溢れる寸前だった。目の前の宗方の顔が涙で滲み始める。
「オレは……おまえをたくさん傷付けた……」
「玄龍さんのことですか?」
「最初、おまえと玄龍さんを重ねてたのは本当だ……。おまえが似てたから……」
宗方の手が天馬の頬に触れた。
「今は……どうなんですか?」
そう聞かれ、天馬は首を振った。
「オレは、今でもあなたを、忘れることができないでいます」
その言葉に天馬は目を上げた。真っ直ぐなに向けられた意思の強さを感じる目は変わっていない。
その真っ直ぐな宗方の目が天馬には痛かった。
「オレは……男だ。おまえなら、いくらでも女が寄ってくるって……」
そう言って、天馬は宗方から逃げるようにキッチンに立った。コーヒーをカップに注いだが、動くことができなかった。
その時、後ろに気配を感じたと思うと、抱きしめられていた。
「オレのこと……嫌いですか?」
「……っ」
天馬の目からポロポロと涙が流れた。
「嫌いになんて……なれるわけねーだろ……」
嫌いになる理由などない。
寧ろ、自分でもその気持ちを持て余すくらいに、宗方への想いは膨らんでいった。一年以上経った今でも、その気持ちが薄れることはなかった。
「じゃあ、好きですか?」
「なんで……!そういう意地の悪い聞き方するんだよ!」
勢い良く振り向くと同時に、今度は正面から抱きしめられた。
「オレは、おまえをたくさん傷付けた……オレの勝手な欲でルシファーに入れて、無理矢理ルシファー辞めさせて……挙句、玄龍さんと重ねて……おまえを散々振り回した……そんなオレが、おまえの傍にいる権利なんて……」
自分で言いながら、罪悪感で胸が締め付けられる。言葉にして、改めて自分がどれだけのことを宗方にしたのかを思い知らされる。
宗方は天馬の髪に唇を寄せると、鼻を髪に埋めた。
「頭が……オレの傍にいたくない、いてほしくないと言うなら、オレは消えます。でも、傍にいる権利とかって言うならそれは違います。オレは、あなたの傍にいたいです」
宗方の顔が近づいてきたと思うと、唇を塞がれた。ずっと恋い焦がれていた宗方の唇。
一度唇を離すと、お互いに息を上げ顔が蒸気していた。
「どうしようもないくらい……」
天馬は言葉を一度切ると、
「ずっとずっと、おまえのことが好きだった……」
そう言って、背伸びをし宗方の首に腕を回すと、再び唇を塞いだ。
宗方が、天馬の腰に手を回すと。不意に天馬の体が浮いた。宗方に持ち上げられ、そのままベットまで運ばれた。
天馬は宗方に組み敷かれ、
「愛してます。これからずっと傍にいさせて下さい」
そう耳元で呟かれた。
「――っ」
ハタハタと天馬の目から溢れる涙を、宗方は舌ですくい上げ、目元にキスを落とす。
一年半振りに二人は肌を合わせた。
繋がりながら宗方に何度も、好きです、愛してます、と繰り返し耳元で囁かれた。
それが天馬を煽り、宗方に触れられる全てが性感帯になったように、どこを触れられても異常なほどの快感を感じた。
何度も激しく求める宗方に、天馬はその度に絶頂を迎えた。
お互いの精液でぐちゃぐちゃになりながら、最後の頃にはとうとう色がなくなったものが天馬の先から溢れ、最後の吐精で天馬は意識を飛ばした。
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