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第27話
目を開けると、宗方が天馬の髪を撫でていた。
「んっ……」
宗方に引き寄せられると胸に収まる。
「風呂……入りてー」
どちらのかわからない精液で体中がベタベタだった。
「入りますか?」
「動けねー……」
腰に全く力が入らず、暫く立てそうになかった。
「オレ、風呂汲んできます」
そう言って、宗方は布団から抜け出した。
また、ウトウトと眠気が襲う。その時、体が浮いた。
「宗方……?」
目を開けると、宗方にお姫様抱っこをされていた。
「恥ずい……」
天馬はお姫様抱っこに恥ずかしくなり、顔を宗方の肩口に埋めた。
浴室に入りると椅子に座らせられ、シャワーをかけられる。お互い体を洗うと、二人で湯船に浸かった。
宗方に背中を抱きしめられる格好になる。ただでさえ男二人で狭いところに、191センチの男が後ろに張り付いているのだ。お湯など半分以上流れてしまっただろう。
「狭え」
「我慢して下さい」
「191センチじゃ、家の風呂も足伸ばして入れないだろ」
「193センチです」
「え?伸びた?」
「この前測ったら伸びてました」
「2メーターいったりして」
「さすがに無理かと……」
パシャンと音を立て、宗方の腕が天馬の前に組まれた。右の前腕にはペガサスのタトゥー。それを天馬は撫でた。
「これって、オレ?」
「そうです……」
何の躊躇いもなく宗方は言った。
天馬はそのペガサスにキスを落とした。宗方の手が顔に触れ、そのまま自分の方に天馬の顔を向けると唇を塞がれた。
「ん……んっ……」
舌を絡められ、クチュ、クチュ……と唾液が絡み合う音が浴室にいやらしく響いた。
天馬の背中に硬くなったものを感じる。
「言っとくけど、もう無理だからな」
「分かってます」
宗方は目元を赤らめて言った。
だが、それも可哀想に思い、浴槽の縁に宗方を座らせると口で抜いてやった。
風呂を出ると、天馬は宗方の膝枕でソファに横にり、宗方にタバコを取ってもらう。行儀悪く寝タバコをする。
「そういやさ……」
宗方が目線を天馬に落とす。
「ウィンターカップ?だっけ?天王寺戦って結局、どうだったの?」
「オレがルシファー抜けた後のですか?」
「そう、なんか最後1ゴール差だったやつ」
「やっぱり、見にきてたんですね……」
そう言って苦笑いを浮かべた。
「やっぱりってなんだよ……」
天馬はこっそり見に行ったことが分かってしまい、気恥ずかしくなり顔を赤らめた。
「最後……シュート打とうとした瞬間、頭の顔が見えて……」
あの時、宗方と目が合ったと思ったのは気のせいではなかったのだ。
「外しました」
「マジ⁈」
「マジです」
宗方に少し据わった目で見下ろされた。
「オ、オレのせいなわけ⁈」
「いえ……オレの集中力が足りなかっただけです」
「だ、だろー?おまえの集中力がないのが悪いんだよ……」
「でも、少しは責任感じて下さい」
「もう終わったこと言ってもしゃーねえじゃん」
重い腰を庇いながら、起き上がりタバコを消した。
「で?おまえ、この近くに住むの?」
途端、宗方の目が泳ぎ始めた。
「何?」
「まだ……借りてません」
「は?だって、大学って来月辺りから始まるんだろ?」
「ここに住まわせてもらおと思って」
「……」
天馬の目が点になる。
「ホワッツ?」
「ここに住ま……」
宗方の言葉の途中で頭を引っ叩いた。
「おめーバカか。ダメに決まってんだろ」
「ダメですか?」
「オレがダメって言う、頭はなかったのかよ」
「多分、大丈夫だろうって思ってました」
「おまえ、意外に神経図太いとこあるよな」
「オレ、そしたら宿なしなんですけど」
「そんなの知るかよ」
「お世話します。家事洗濯、極力やります。バイクで送り迎えします」
お願いします、そう言って三つ折りをついた。
「狭えーんだよ。野郎二人で1Kはよ。おめーは193センチだし」
「身長は関係ないかと……」
天馬は暫く黙り込む。
「いつも一緒にいたくないですか?」
「あ?」
「オレは片時も離れたくないです」
その言葉に天馬の顔が熱くなる。
「なんか、上手く良く丸めこめようとしてねーか?」
「でも、もう離れるのは嫌です」
そう言って、天馬に抱きついてきた。
(あー、クソ、可愛い……)
「わかったよ!」
天馬はとうとう根負けした。
宗方の顔が破顔した。それは、天馬にしか分からない程度の表情の変化。
「引っ越し……するか。もっと広い部屋に」
ポンポンと宗方の頭を叩いた。
「ご恩はこの体で……」
宗方はまた、抱きついてくると今度は押し倒してきた。
「いや……それは程々にしてくれる?」
さすがに体がもたない。
「愛してます、天馬さん」
宗方に始めて名前を呼ばれ、天馬の顔がみるみる真っ赤になっていった。
「な、なんか、恥ずいな……」
「でも、もう頭じゃないですから」
「そう、なんだけどよ……」
暫くは、宗方から名前で呼ばれる違和感は続くだろう。
「今度、ダンク見せてくれよ」
そう言って、宗方の唇に触れるだけのキスを落とした。
「天馬さんが望むなら、何度でも」
そして二人は深く口付けた。
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