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Ⅸ
†
オリーブ畑が連なる道の果てーー彼の城は孤高の峰にあった。
ウェリーを買った美しい男の名はゼフィール・アラベスタ。
爵位は第三位の伯爵。
そして彼はアルファの性を持っていた。
彼は自由奔放な人柄のようで従者は皆、日雇いらしく、屋敷には彼一人きり。
そして驚愕の事実が発覚する。
彼はなんと巷では有名な人物だったのだ。
貴族たちは噂好きで四度の食事と同じくらいゴシップが好物だ。
だからゼフィールに関する噂は世間に疎いウェリーの耳にも届いていた。
その噂とはーー彼は悪魔の化身で人間の肉を好む殺戮者らしいこと。
なんでも彼の庭に植えてある見たこともない大きな木の樹液は人の血液で、殺された者たちの骨はそこに埋められているとかーー。
そのような噂をすべて信じることはできなくとも、たしかに見たことのない巨大な木がこの庭にはある。
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