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「あ、あの……」  人買いが去り、主人が替わった。  果たしてこれから自分はどうなるのだろう。  不安に脅かされたウェリーは新しい主人を見上げた。 「助けてくれたとは思うなよ? お前は奴隷。それだけだ」  突き放すようなその言葉。  けれどもなぜだろう。  男から怖いという感情は湧いてこなかった。 「……はい。わかっています」 「だったら乗れ。無駄口は叩くな。いいな?」  男はウェリーを立たせ、馬車に乗るよう顎で示した。 「は……」 『はい』  ウェリーは返事をしそうになった口を、自由になったその手で押さえた。  雇い主が変わったとしても自分は奴隷には変わりない。  馬車に乗り込んだウェリーは孤独という寒さから耐えるため、木の枝ほどの細い腕を体に巻きつけ、静かに目を閉ざした。

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