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第3話
講義室、ドアの前でクラスメートと渋谷がジャレてる。
普通ならば、日常的なワンシーン。俺は腐女子の彼女のせいで、すっかり見方が変わってしまった。
「へぇ……渋谷、くすぐったいの苦手なんだ。じゃ、これは?」
「や!やだってば!首、無理!ゾワゾワする!」
嫌がる渋谷の手を掴み、無理矢理くすぐってる同じクラスの風間。だいぶデレデレしてるし、触り方が妙にやらしい。
そこに上條が通りがかった。
「や、やめ……アハ、ハハはっ!!やめろって……ん……やだっー!」
渋谷は気付かずにまだ騒いでる。ピリピリと空気が悪くなる。
「どけよ。邪魔。」
冷たい言葉にその場がシーンとなる。
「あ……ごめん……」
渋谷は慌ててドアの前からどいた。
皆が移動した後、渋谷が少し落ち込んだ様子で聞いてきた。
「………………俺、上條に嫌われてるのかな。
アイツ、誰にでも優しいのに……
なんか俺にだけ当たりがキツくない……?」
鈍感でノンケの渋谷は上條の気持ちに一欠片も気付いてない。
理由は簡単。上條は渋谷が好きで素直になれないタイプ。友達とジャレてるのも許せない位のヤキモチ妬き、しかも口下手。
………………なんて言えないし。
いーのかよ。上條。
渋谷は嫌われてると勘違いしてるぞ……
講義室に忘れ物を取りに行くと、まだ、人がポツポツ残ってる。
窓際に上條が立っていた。
赤い顔……?
何、見てんだ……?
好奇心で外を覗き、目線の先を探るとそこには渋谷がいた。
先生に頼まれたのか、花に水をあげてる。
その時、渋谷は手を滑らせて、ホースを落としてしまった。
サーー。
シャワーがひっくり返り、勢いでクルクル回ってる。水が雨みたいにあちこちに飛び散り、地面を濡らす。
「あー!!ど、どうしよう!!」
渋谷は一人で大騒ぎ。そしてビショビショ。
思わず笑ってしまう。渋谷って、どっか抜けてんだよな……物があれば必ずつまずくし……
「くす……」
上條もその様子を見て、笑いを堪えてる。
優しい顔……
愛しそうに渋谷を見つめる上條をチラ見。
ツンデレやめて、渋谷に優しくすればいいのに。なんだか不器用な上條が不憫で仕方なかった。
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