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Please say no:すれ違う想いと募る気持ち

 パーティに使う招待状を作っていたら、午後のお茶の時間になっていた。いつもなら3時ちょうどにキサラギがお茶を運んで来るハズなのに、ちっともやって来ない。  催促しようかと電話を取り上げたとき、ノックの音が執務室に響いた。 「――はい」  ちょっとだけ不機嫌な声で、応答してやる。 「失礼いたします。遅れてしまい、大変申し訳ございません」  慌しく入って来た者は、父の側近のひとりだった。 「キサラギはどうした? なぜお前がここに?」  一気に喉が渇いてしまい、掠れた声で問いかけてしまう。 「キサラギ殿は午前中に国王様のもとに訪れ、今までの有給休暇の申請をし、先ほど城を出て行かれました」 「有給、休暇? どうして突然……」  愕然とする僕の傍に、紅茶がそっと置かれた。 「さあ、私も何も聞いておりませんので、返答致しかねます。それとエドワード様、不慣れな執事の仕事になると思いますが、キサラギ殿が戻るまでヨロシクお願いいたします」 「……ああ、分かった。こちらこそヨロシク頼む」 「キサラギ殿からエドワード様に関してまとめた書物を、20冊分お預かりいたしました。こちらを読んでいてお茶の時間に、遅れてしまった次第でございます。本当に申し訳ございません」  ぺこりと一礼をして、執務室を出て行く代わりの執事。思わずキサラギの影を、そっと重ねてしまった。 (どうして急に、城を出たというのだろう?)  僕は同情心で、キスをしたんじゃないのに――いつ、戻ってくるのだろうか。先が見えないと心配で堪らなくなる。 「キサラギ……お前は今、どこにいるんだ? こんなときだからこそ、傍にいて欲しいのに」  胸がつぶれそうで、苦しくて堪らなかった。  どうして僕の想いは、アイツに伝わらなかったのだろう。すれ違ったままじゃ、何も始まらないというのに――

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