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案内された部屋に入ると、中には3人の男の人がいた。俺たちの姿に気づくと一斉に視線が集まって、思わず後ずさってしまった。
「ああ、科戸のガキか。待ってたぜ」
ソファに深く座っていた人が気怠そうな声で言った。きっとこの人が一番偉いんだろう。
きつく眉が寄っていて、まるで怒ってるみたいだ。…本当に機嫌が悪いのかもしれないけど。お金返してない訳だし。
「シノさん、弟の方は」
「神田が行った」
やっぱり千尋も来るのか。
俺がしっかりしなくちゃと、ぐっと気を引き締めて『シノ』と呼ばれた人を正面から見た。
大きな体はまるで熊みたいだ。自分の勝手なイメージで、そういう系の人は高そうなアクセサリーをたくさんつけて高そうなジャケット羽織っているのかと思っていたけど、この人はトレーナーにジーンズと質素な服装をしていた。
「そこ座れ」
顎で命令され、固まる体を何とか動かして大きなソファに腰を下ろした。
「高乃…お前を連れて来たそこの奴の事だが、そいつから話は聞いたか」
「えっと…母さんが借金をしてたって聞きました。それで、消えたって」
「そう逃げられた。どこ行ったか心当たりは」
「あ、ありません」
「使えねぇな」
舌打ちをされて、びくりと肩が跳ねた。
「知らねぇなら仕方ねぇ…ここから本題に入る。お前、母親の代わりに借金返しな」
「…そういう話になるのかなとは思ってました。けど、俺まだ学生だし…、大金なんてとても」
そう言うと、可笑しそうに鼻で笑われた。
「ちゃんとこっちで提案してやるよ。それに従えばそれでいい。質問は?」
「どっ、どんな内容なんでしょうか」
「それは明日ゆっくりな。俺はこれから忙しい。他は?」
もう怖くて、その先はとてもじゃないけど聞けない。
ふるふると頭を横に振ると、満足気な顔をしてソファから立った。
「お前の面倒は高乃が見る。頼んだぞ」
それだけ言って部屋から出て行ってしまった。
その後ろ姿を見送りながら相変わらず上手く動かない体で座っていると、俺を連れて来た男の人…高乃が話しかけてきた。
「弟くんが来たら今日から住むところ案内するから」
「…住む?家に帰してくれないんですか!?」
「そしたら君たちも逃げるかもしれないでしょ。明日荷物取りに連れてってあげるから我慢して」
言葉が出ないくらい愕然としてしまった。ショックだ。あり得ない。
そんな俺の気持ちは置いてけぼりに、高乃は『待ってる間ココアでも飲む?』なんて言ってくる。
どうやら思っているよりも事は大きいらしい。
今はとにかく千尋の顔を見て安心したいと思った。
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