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高乃 隼人は飲み慣れたコーヒーを淹れると、テレビをつけて乱暴にソファに腰を下ろした。 まだ遅い時間ではないから、バラエティやら映画の再放送やらで番組欄は賑やかだ。その中から適当に騒がしいものを選んだ。 (…シノさんには困ったな) 奥の部屋をちらりと横目で見ながらため息を吐いた。 まさか俺が誰かと…しかも赤の他人と生活することになるとは思いもしなかった。正直あの子とどう接していけばいいのか分からない。気疲れしそうだ。 あの子の様子を見る限りではきっと部屋に閉じこもりそうな気がするけど、他人の気配が常にするというのは何気に嫌なものだ。 それでも今回のことを断らなかったのは、『シノさんのお願い』だから。シノさんの言うことなら、例え俺の生活が狂わされようと俺の中に断るという選択肢はないのだ。 「だとしてもなぁ…これは流石になぁ」 心底、面倒なことになったなと思う。 これからの事を考えてまたため息が出そうになるのをコーヒーで誤魔化そうとした時、彼に寝間着を貸すのを忘れていたことに気づいた。 制服で寝かせるのは少し気が引ける。 重い腰を上げて衣装棚から適当な服を出すと、彼の部屋に渡しに行った。 「椛くん、入るよ」 待ってみても返事がない。再度ノックと一緒に声をかけて見るが一向に反応はなかった。 まさか思考がヤバい方向に行ったか?いきなりこんな事になって自殺を考える人は決して少なくない。 勝手に死ぬのは構わないが、そうなると彼を任された俺の信用問題に関わる。 急いで扉を開けて姿を探した。俺の心配は外れ、彼はベッドの中で丸まるようにして寝転がっていた。 「…寝てんのか」 念のため呼吸の確認だけしておこうとベッドに近寄ると、その目が濡れていることに気づいた。 どうやら寝ながら泣いているらしい。その表情は純粋で、綺麗だと思った。 (まぁそうだよな。まだ高校生の子供なワケだし) 人生ツイてなかったと割り切るのは、この歳じゃあ難しいだろう。 彼のこれからの苦難に同情に近いものを抱きながら、髪をひと撫でた。

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