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離してあげられなくて、ごめんね②

結局、放課後残ってみることにした。 文句言われるに違いないのに残るなんて、暇人もいいところだけれど。 あと、単純にあの、きれいな字を誰が書いたのだろうという、好奇心。 それに、今日もナギは即効で教室から出たみたいで、帰ったところで手持無沙汰だし。 と、誰に言うでもなく言い訳をしながら図書室へ向かった。 この学校には、図書室と新図書館があり、図書室は昔一般的に使われていたみたいだけれども、数年前に増設された図書館にほとんどの書物が移設されてしまったため、図書室は数年に一度借りられるかどうかといったマニアックな本が置かれている。 もちろん、図書委員がこの場所を管理しているわけではなく、本の貸し出しはセルフサービス。 殆ど人が訪れることはない。 そんなことを俺が知っているのは、俺が数少ない図書室の利用者であり、たまにサボりの場所に使わせてもらっているからだ。 本当にたまに…だけれど。 校舎からも若干遠いこの珍しい場所で待ち合わせだなんて、変わった相手だ。 自分のことはさておき、そんなことを思いながら歩いていると、いつのまにか図書館につく。 いつものごとく、辛気臭いオーラただようこの部屋。 多分、古い本と防虫剤のにおい。 俺はこの臭いが嫌いじゃない。 「…あの。」 図書室の奥から声が聞こえた。 俺の方が先に来たと思ったけれど、逆だったみたい。 「こんにちは。君が手紙をくれたのかな。」 そういって顔を向けると、ジローみたいな可愛い顔の男の子…ではなく、どちらかというと、いや、どちらかといわなくてもイケメンの男子がいたのだった。 そのイケメンくんは、俺の質問にうなずき、目をさまよわせている。 彼は見るからにヤンチャしてそうな風貌で、もし喧嘩をしかけられたら、間違いなく負ける自信がある。 気まぐれでここにきてしまったことに大いに後悔しつつ、彼が、あの手紙をくれたのだと、名前すら知らない彼の一面に若干の喜びを感じている自分もいる。 雨の日にヤンキーが猫を拾ったのを目撃したのと同じような、そんな意外な一面を知ったような喜び。 まあ、雨の日にヤンキーが猫を拾ったのを目撃したこともないし、初対面の彼に意外な一面もなにもないのだけれども。 「あの…。村上さん。」 「はいはい、なんでしょう。」 見た目とは裏腹に殊勝な態度の彼。 拳さえ使わなければ、いくらでも聞きますとも。 文句の聞き流しスキルは、ここ1年で大分あがった。 任せてくれ。 「村上さんが、好きです。」 「…え?」 え?俺の聞き間違い?

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