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放課後 Ⅱ

 ふにゃりとすべてを吸収する声。  今日もはねまくりの猫っ毛。  楽しげに細められた、俺のお気に入りの灰色。  ――遊人。  俺はぎこちなく首を横に振った。 「あー……悪ぃ、俺、今日は早く帰んなきゃなんねぇから」 「そなの? じゃー俺は翼にお供しよっかな」  へらっ、と笑って俺の隣にならぶ。  俺はそれをただ見てるだけ。  何も言わない俺を、なんか否定的に受け取ったのか、遊人は猫背の背中をさらに丸めて、 「……だめ?」  だめっつーかなんつーか。  そんな苦笑い浮かべられたら、だめなんて言えないじゃん。  ……元々断る気もないけど。  俺は遊人に笑ってみせた。ウツウツな気分なんて吹っ飛んでしまえ! 「仕方ねーなぁ。ふたりでまったり帰りますか」 「ら・じゃー!」  ものすっごいテキトーな手ぶりで遊人が敬礼する。  ああこいつバカだ。  ――俺は、まだ言ってない。  仲のいい友達に、……遊人に。 「俺、転校するんだ」って。

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