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第4話
男、独身、一人暮らしで自炊する人はどれだけいるのだろう。最近は料理男子などと聞いた事はあるが、自分はからっきしだ。
仕事を始めてからは仕事第一で、他は二の次だった。決して要領がいいとは言えない俺は、仕事で手一杯で料理は勿論、家事は必要に迫らなければしなかった。
食事に関して言えば、仕事場と自宅の間にコンビニがあったので、働いている時はもっぱらコンビニ飯ばかりであった。現在仕事を辞め、仕事に行く道は使わなくなった。コンビニは買いだめするにはあまり適してる場所ではないからだ。
…いや、1人前の冷凍食品や日持ちする食品があるのは知っているが、今はあの道を避けてしまっている。
あの道を通ると、胸にどす黒い物を詰め込んで、下を向いて歩いていた、あの時を思い出してしまうから。
俺の行動範囲は今や殆ど自宅からスーパー迄の距離であった。
兄から食事を送れと言われ、別れた後すぐに兄と母と俺との3人グループの申請が届いた。グループ名は『飯食え』。
…率直である。
俺は兄との約束のため、ご飯の写真を食べる前に撮って、送るという作業をすることにした。
朝:ヨーグルト1個、昼:カップ焼きそば、夜:卵かけご飯
母『野菜を食べなさい。肉と魚も!』
兄『母に同意』
朝:ふりかけご飯、昼:きゅうり2本、夜:レトルトカレー
母『野菜はプラスで食べるのよ。肉ちょっとだけじゃない!』
兄『作りなさい』
俺の写真にそれぞれコメントがつく。食べているだけでも成長なのに、求めるレベルが高い。
作りなさいと言われたが冷蔵庫の中身はキュウリとトマト、卵、調味料類、飲み物のみだ。食材は3つしかない。
父さんが作ってた親子丼を真似て、溶いた卵と麺つゆで卵丼を作った。それを載せると『卵掛けご飯と変わらない』と母からつっこまれ、兄から『肉と魚を食べなさい』と追撃が来た。
「作ったのに……。」
まぁバランスは良くないとは思うのだが、肉や魚は調理をしないといけない。そして日持ちもしない。1人で食べても楽しくないし、味もしない。作る意味が見出せない。
「あ、そうだ。」
スーパーの途中に食堂があった。カフェみたいな外観の。確か定食もあった気がする。それなら自分は作らなくていいし、買い物ついでにも行ける。
さっき食べたばかりなので、ご飯どきにでも行こうと考え、少し眠くなったので、仮眠をとることにした。
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