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第8話
「あ!す、すみません。俺また変な事言って…!」
沈黙が続いてしまったので、俺はまた失言したのではと焦って顔を上げると目の前を手の平が視界を遮った。
「えっ?七瀬さん…?」
「待って。今俺、面白い顔してるから。」
面白い顔?手の平の隙間から顔をぱたぱたと仰いでいる姿が見える。
俺の発言はそんな面白い程、変な事を言ってしまったのか…。上がりきらない俺のネガティブは再度降下する。
「すみません…。」
消えかかりそうな声で再度謝り、下に腑く。
「えっ。いやいや、風間君のせいじゃないよ。謝らないで!」
慌てた声が聞こえ、視界を遮っていた手で、肩をばんばんと強めに叩かれた。見上げると七瀬さんの顔を確認することができる。
特に面白い顔をしてることもなく、ほっと安心する。
さらに少しの沈黙の後、あのね、あー、えっと、と七瀬さんの滑舌が悪くなり、言い淀んだ。
「…俺、ここ始めて、何人か常連さん出来たけど、そんな事言ってくれたの風間くんが初めてでさ。…面白い顔と言うのは、照れたので、見ないで欲しかったの。」
そう言いながら七瀬さんの顔が少し赤くなる。俺もつられて、顔に熱が集まってきた。
「言いたくなかったのに…。そんな不安そうな顔されると黙っとけないじゃん。いい歳して照れたとか恥ずかしい…。」
両手で顔が見えないように覆った姿は年上の人だけど、可愛く見えてしまった。
「可愛い……」
俺が思わずぽつりと呟いてしまった言葉が七瀬さんに届いたようで。
「…まじでやめて。」
ぶっきらぼうな言葉で、顔は見えないままだったけど、声が怖くなくて思わず笑みが出てしまった。
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