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第11話
久しぶりに会社帰りに通っていたコンビニに訪れた。今日は不思議とコンビニへ行く道も嫌にならなかった。気持ちでこうも違うのかと内心驚く。
夜ご飯にオムライスとチキンサラダを買って、入り口に置いてあるバイト求人誌を取って帰路した。
家に帰り着き、バイトの求人誌を確認すると様々な種類のバイトが載っていた。短期も長期もありどれにするか悩む。ふと日雇いの文字が目に飛び込み、これだと直感した。短期でも1シーズンや、2週間で今の俺には長く感じる。日雇いで慣れたら短期のバイトに移ろうと決め、日雇いの求人をメインで目を通した。
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「今日はありがと。これ給料ね。」
「はい。ありがとうございます。」
ジャラと小銭の音をする茶封筒を受け取り、挨拶をして事務所を出る。
8時間のバイトで6880円。今日は単純入力の手伝いだった。パソコンの前に座りっぱなしで肩と目が痛い。目頭を軽く揉み、周りを見渡すと会社員と思われる人達が多くいた。特に負の感情も湧かずに景色の一部として捉えることができる。
俺はあの後、日雇いを4つした。皿洗い、会社の清掃作業、道路工事、そして事務作業。
一番最初に皿洗いを申し込んだ。理由はバイトの中で一番簡単そうだったから。電話をして、明日来てくださいと言われた日は怖くてうまく眠れなかった。
寝不足のまま皿洗いのバイトの日になり、恐る恐るバイト先を尋ねた。
店長さんや他のバイト人は「人手不足なんで助かります!」と温かく歓迎してくれた。皿洗いが主な業務だったが、お客さんが少ない時に卓上の備品の補充をすると怒られる事なく、逆に感謝された。
そうやって無事に1日が終わり、給料を貰った時、せり上がってくるように達成感を味わった。
仕事でミスをしなかった、お礼を言われた。俺にはとても大きな一歩だった。
少し自信がついた俺は色んな日雇いを行った。工事現場では力仕事が主で、結構強い言葉で「早くやれ!」と叱責されたが、食事の時に「細いのによくやるなぁ」と言われ嬉しさが勝った。
日雇いバイトをして、次の日は休んで他のバイトを探し、次の日はまたバイトをするという生活を繰り返した。
バイトした日は疲れるのだろう、朝まで一回も起きずに熟睡できて悪夢も見なかった。
俺は少しずつ、少しずつ進んでいるのを実感していた。
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