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第37話
何故バイトが必要になったのか詳しく聞くと、なな食堂は大手のグルメブログで有名ブロガーが高評価をつけたらしく、時間を問わず人が多くなったとのことだった。関君みたいに2時間だけなら、俺もバイトは出来ないことはないが、今は11時から19時の時間帯で働いてくれる人が欲しいらしく、現実的に両立は難しい。募集するバイトの人は週5日で働いてもらい、関君も週1回は11時から19時でバイトをして、何とか回していく方向で決まっているそうだ。明日からバイト募集の紙を食堂に貼って、来なかったら求人にお願いするとのことだった。
俺は話を聞きながら、新しくバイトが入ったら、今までのように七瀬さんと話す機会はもっと少なくなるんだろうなと悲しくなった。
「あー腹いっぱいなったぁー!七瀬さんゴチになります〜。」
「俺のまで奢ってもらって…、ご馳走さまです。」
「どういたしまして。お腹いっぱいになったならよかったよ。」
関君は寿司10皿とラーメン、デザート2つを食べてとても満足顔だった。俺も後半は味わう状況ではなかったが、お寿司8皿食べてお腹は膨れた。
「じゃあ俺はネタ集めに図書館行きますね!」
関君は時事ネタが主なのでなので、図書館にある新聞を読みにほぼ毎日通ってるそうだ。バイトもなな食堂だけではなく、週3でWebニュースの編集業務もしているそうで、ネタの宝庫っすよと大トロを食べながら話してた。ネタ作りの時間も考えると毎日やる事がありすぎてヤバいんですと楽しそうに、自分の夢に向かって過ごしてる関君が眩しく見えた。俺たちに手を振りながら、足早に図書館へ向かっていった。
関君の背中を見送って七瀬さんと2人きりになった。
「この後適当にぶらぶらしようかなって思ってたけど、夜勤って事は今日の夜もあるの?」
「いえ、毎週月曜と火曜に休みを入れて貰ってるので、今日は休みです。」
七瀬さんと出かける日は前後休みたかったので、この勤務にしてもらったのだ。
「…もしかして俺と出かけるため?」
「はい。俺の楽しみですから。」
笑いかけると七瀬さんはふいっと顔を俺から背けた。
「どうしたんですか?」
「……嬉しいなって思って。」
ほんのり赤く色づいた顔をぱたぱたと手で扇ぐ姿は見覚えがあった。
「…照れたんですか?」
「…風間君、恥ずかしいからそれは言わずに心にしまってて欲しい……。」
七瀬さんの照れた顔をじっと見ていると、俺は、前には感じていなかった胸の高鳴りをトクトクと感じる。胸に温かい気持ちが溢れ、笑顔がこぼれた。
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