46 / 80
第45話
しばしの沈黙後、秋鷹は水で喉を潤し、そろそろ出るか、と声をかけてきた。
「あ、待って。」
「どうした?」
俺は秋鷹に1つお願いをした。
「ゲイビが見れる、サイト教えて。」
「はぁ?」
何で俺に聞くんだと秋鷹の目は語っていたが、俺は経験がない。経験がないので、ゲイビを見ようと思ったが、朝勃ちしていたら、トイレで擦って出すだけなので、えっちなサイトすら知らない。でもゲイのDVDを借りる勇気もないし、秋鷹以外にこの話題を相談出来る人はいないので、俺は秋鷹を頼った。
「エロサイト見れば載ってるだろ…。」
「俺、見たことないんだ。」
「えっ!」
秋鷹は心底驚いた顔をする。
「…どうやって一人でシてんの?」
「え、えっと、朝勃つじゃん。それをこう…抜いてる。」
「すげえな。想像で抜けんの?」
「想像?」
「彼女とセックスしてるのとか、動画とか想像してさ。」
長い付き合いだが、このような話はしたことがないのでドキドキした。秋鷹も先程とはうって変わり、楽しそうに話している。
「んー特に何も想像してない…。セックスもしたことないし……。」
「は?」
秋鷹は唖然とした表情で俺を見てきた。
「え…。直って、セックスしたことないの?」
「え、うん。」
「29歳で童貞なの?」
「う…、うん。」
「30手前で童貞なの?」
「うん…、何で言い方変えるの?」
「30まで童貞だったら妖精になるんだぞ。」
「えっ何それ?」
「それだけ30童貞は少ねえって事だよ。」
「そ、そうなんだ…」
秋鷹から哀れみの表情で見つめられるといたたまれなくなってきて、ガヤガヤと賑やかな周りに聞こえているんじゃないかと急に恥ずかしくなってくる。
「直はまだ童貞だったのか……。」
「そんなに連呼しないで!」
「お、すまんすまん。」
笑われながら頭をぽんぽんと撫でられる。俺は顔の火照りを引こうと手でパタパタと仰いだ。
秋鷹はズボンのポケットをごそごそとして携帯を取り出し、操作し始めた。すると俺の携帯からメッセージ受信を効果音が2回鳴る。
「送った。俺も見たことないけど、ゲイ向けちょいちょい動画アップされてるから、とりあえず帰ったら見てみろよ。」
「…うん。ありがとう。」
秋鷹から来ていたメッセージにはURLと、その下には手を上下に動かし、やらしい顔をして涎を垂らしている熊のスタンプがきていた。
「…何これ。」
「ん?ああ。励めよっていう応援メッセージ?」
にやにやして熊と同じような動きをしている秋鷹を見て、俺は顔を真っ赤にして「馬鹿!」と叫んだ。それを見てさらに秋鷹が楽しそうに笑う。
「まあ、直が出した答えが何にせよ、俺はお前の味方だからな。いっぱい考えろよ。」
「え!う、うん…。」
さらりとカッコいい事を言えてしまう秋鷹に、俺はいい友達を持ったなと思った。
ともだちにシェアしよう!