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第57話

「付き合った時に、ゴムとローションがあったらいいって言ってたのお思い出して買ったんです。」    先週は水族館に行った後に七瀬さんの部屋にお邪魔した。その時にキスや抱きしめられたりはしたけれど、それ以上のことはせずにお別れした。どうしてエッチなことしなかったんだろうと不思議に思って、思い返した時にゴムとローションがあったらって言っていたのを思い出した。そしてネットで調べて、通販で買ったのだ。今日はお泊りで時間もあるし、エッチな事をしてくれるんじゃないかと思ったけれど、キスとぎゅっと抱きしめてくれるだけだった。それだけでもすごく幸せだけど…、あの熱のこもった瞳で見て欲しい。   「七瀬さんと触れ合うのすごく気持ち良くて、また触れ合いたかったんですけど、先週は…エッチな事しなかったから、この2つが足りなかったせいかなって思って…。」    俺は手に持った2つを七瀬さんによく見えるように差し出す。それをおずおずと七瀬さんが受け取った。   「誤解させてたね、ごめん。付き合った時は俺が、ちょっとガタが外れてがっついじゃったからゆっくりしようかなって思ってたんだ。」 「あ……。そうなんですか。」 「……うん。恥ずかしながら。風間君想像より可愛かったし。」 「可愛い……。」    顔に熱が集まり、照れてしまい、七瀬さんを直視できなくなる。   「包まずに言うけど、風間君は俺とセックスしたいって思ってくれてるって事でいいのかな?」 「…はい。そうです。」 「俺、バリタチだけど大丈夫?」 「バリタチ?」  「挿入する側ってこと。だから風間君はネコ。挿れられる方って事だよ。」  1つ知識が増え、勉強になる。 「…はい。それで想像してたので大丈夫です。」 「そうなんだ。」    七瀬さんは俺から受け取った2つを見つめる。   「風間君。もうひとつ大事なこと確認していい?」 「はいっ。」    今から動画のようにセックスをするんだろうと胸が高鳴る。   「エッチするときは挿れられる方は事前準備が必要なんだけど…してる?」 「事前準備…?」 「うん。えっとね、エッチするとき男同士だとお尻の穴使うのはわかる?」 「はいっ。動画で見ました。」 「そっか。お尻って女の子と違って性器じゃないでしょ?だから洗浄が必要なんだ。」 「洗浄……?」    ピンとこなくて、頭の上に疑問符をつけていると、七瀬さんがコンドームとローションを膝の上に置いて、携帯を操作する。   「これ見てみて。」 「はい…。」    携帯を受け取り、言われたままに目を通していくと、『気持ちのいいアナルセックス』と書かれた見出しの下には細かな説明が載っていた。    (え……、え、ええ!)    いつくかの洗浄方法の記載や、前立腺と呼ばれる場所、挿入の楽な体位などが書かれていた。   「風間君の気持ちはすごく嬉しいよ。でも綺麗にしないと出来ないんだ。あと、風間君は後ろ使ったことないでしょ?」 「あ…はい……。」 「挿れるために後ろを解す必要があるんだけど、初めての人は柔らかくなりにくいんだ。徐々に慣らさないと、切れてしまって後々大変なことになる。」    初体験動画では気持ち良さそうにしていたのに、あんな風にはならないってこと?初体験じゃなかったの?   「俺もしたいけど、風間君を傷つけたくない。だから今日は指一本挿れてみようか?」 「え、でも綺麗にしないといけないんじゃ…」 「指にゴムつけるから大丈夫だよ。少しずつ慣らして、慣れてきたら抱かせてくれる?」 「……っはい。もちろんです。」    その後ベッドに場所を移し、俺はモノを触られながら、お尻に1本挿入され違和感を感じながらも七瀬さんの指を締め付けるように吐精した。お尻の中がムズムズしたけれど、ムズムズするのは気持ちよくなれる身体だという証明でもあるらしく、沢山触ればお尻だけでイってしまえることもあるらしい。    七瀬さんも一緒にイった後、七瀬さんがふかふかのお布団を敷いてくれた。別々に寝るのが寂しくて、一緒に抱き合って眠りたかったと言うと、七瀬さんは笑いながら俺の布団に入ってきてくれて、背後からぎゅっと抱きしめてくれた。   「狭いけど、我慢してね?」 「…はい。嬉しいです。」 「じゃあおやすみ。」 「はい。おやすみなさい…。」    温かい。俺はドキドキしてなかなか眠気がこなかったら、首筋に柔らかい風が当たり、穏やかな寝息が聞こえた。もう夜中の1時で七瀬さんも疲れてたんだろう。俺の我儘に付き合ってもらって申し訳なくなるも、嫌な顔せずに付き合ってくれて嬉しくなる。 抱きしめている筋肉のついた腕が眠ってしまい、力が抜けてだらんとしている。そっと手先に触れると、指先が少し荒れていた。   「七瀬さん、1週間お疲れ様です…。」    手を重ねて軽く握り、顔の近くに引き寄せる。指先を触りながら、七瀬さんの匂いに包まれていると俺は緊張がなくなって安心していく。そしてゆっくり、ゆっくりと眠りの中へと落ちていった。

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