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第74話 ✳︎✳︎
ゆさ。
「………」
ゆさっ。
「………っ」
ゆさゆさっ。
「……んっ」
身体が揺れる感覚に意識がじわりじわりと浮上する。なんの揺れだろう。……んん、なんか気持ちがいい……。
ゆっくりと目を開ける。視界に人のシルエットと見知った天井が見えた。俺の部屋……、男の人……、あ、但馬せんぱい……
「え」
「ああ、目覚ましたか。すまん、ちょっと力入り過ぎた」
「え……、んっ、ん…、えっ?!」
但馬先輩は至極楽しそうな顔で俺を見つめながら、ゆさゆさと腰を動かしている。それと一緒に俺の身体も揺れて、下半身の奥……、腹の後ろに異物感があり、それも一緒に動いている。
まさか。
但馬先輩は全裸だった。俺も服は全部脱いでおり何も羽織っていない。下に視線を向けると緩く立ち上がった自分のモノがふるふると揺れているのが見える。
「え、え…、な、なんで?え、」
「気持ちいいだろ?風間の尻、上手にちんぽ飲み込めるじゃん。」
ちんぽ……飲み込める……この揺れ……。
「……っ!!い、嫌だ!やめて!」
「……はぁ?」
但馬先輩の腰の動きが止まる。
「い、嫌です!」
「…………」
お尻の穴に入っているモノを抜こうと身体を捻り、ベッドから這い出ようとすると、肩をガッと強く掴まれ、身体を再びベッドに戻され、中のモノも抜けずに入ったままになってしまう。
「うっ」
「……人が優しくしてやってんのにさ、さっきのでわからなかった訳?」
「嫌ですっ!やめてっ、やめてくださウッ!」
バチンッの音と同時に感じる頬の衝撃。時間差で熱を感じる。
「あ……」
「気持ちいいだろ?嫌だ嫌だってうるせぇんだけど。」
顔を叩かれた。急な暴力に把握まで時間がかかる。
(なんで叩かれたの?なんで……但馬先輩とエッチしてるの?)
「い、嫌……。な、七瀬さん……っ」
七瀬さんの顔が浮かんだ。優しく笑って、抱きしめてくれた人。エッチなこともして、今度こそ繋がろうって思ってたのに……。
なんで。なんでここにいるのが七瀬さんじゃないの。
「七瀬さんっ、ど、どいて!離して!」
嫌だ嫌だ嫌だ。こんなこと、七瀬さん以外とはしたくない!
「やめ…うぐっ!」
再び頬に衝撃を受ける。それでも逃げようとすると、今度は拳が飛んできた。叩かれた衝撃とは比べものにならない程頭が揺らぎ、吐き気を催す。
七瀬さん。
「うっ……」
「おかしいな。風間はもっと頭いいと思ったけど。……まぁこれからゆっくりわからせていったらいいか。」
「……ぃ、嫌……っぐぁ」
嫌がっても、嫌がっても但馬先輩はやめてくれなかった。色んなところを叩かれたり、殴られたりするので、頬も肩も腹も……下半身も……心も痛い。
痛みが溜まっていく。七瀬さん、七瀬さん…。会いたいよ。
プルルル……と離れたところから電話の着信音が聞こえる。電話……ああ、そうだ。七瀬さんに電話かけるって約束したんだった。携帯は鞄の中に入ったままだ。携帯取れたら、七瀬さんが助けに来てくれるかもしれない。
ベッドから降りようと試みる。だが、がっしりと腰を掴まれ、骨盤に指が食い込むと痛みで動けなくなる。
「ああぁ、ぃいたい……っ、」
電話は切れてしまうが、また着信がある。
「ッチ、うるせぇな」
イライラしたのか、但馬先輩が俺の頬を更に何度か張る。鼻からツゥ…と血が垂れてきて、拭うと手の甲に血がべったりとついた。
煩いと言っても携帯を取りにいったりはしなかった。電話の着信音と、パンパンと打ち付ける音、ぐちゅぐちゅと粘着質な音。俺の声。ゆさゆさと絶え間なく揺れる。抜け出せない。
「あ……は……、あ、あ」
「あ〜、いい顔になってきたじゃん」
七瀬さん。また抱きしめて欲しいな。沢山キスしてほしい。いっぱい笑って、いっぱい一緒にいたい。
着信はまだあってる。七瀬さん。七瀬さん。手を伸ばすけれど、カバンには全然手は届かない。どんどんあがらう力がなくなっていく。
七瀬さん。大好き。……痛いよ。キツいよ。
……助けにきてよ。
どれぐらい経ったかわからなかったけれど、俺は再びゆっくりと水に沈むように意識を深く潜らせた。
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