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三者面談ー3(R)
「そんなに見るなよ」
「傷がついているといけない」
「大丈夫だってば」
「ほら、ああ、今日はいつもよりひどい」
アディが心臓の上を撫でる。渦を巻く、赤く細い傷。今日はそれが胸の上いっぱいに広がっていた。
「……可哀相に。こんなに綺麗な肌なのに」
アディが、その赤い傷をそっと舐める。湊斗の体がブルリと震えた。暖かく、湿った舌が何度も何度も胸を上下し、時々きゅっと吸い上げる。そのたびに傷は小さくなり、体の中に熱が溜まっていった。
「アディ……も、それ、やめ……んっ」
体を捻って逃れようとするのを、アディは赦さなかった。
湊斗の体を洗い場の床に横たわらせ、重なるようにして湊斗の胸を舐めていく。
「あ、もう、治った!!治ったから……!」
「湊斗…」
アディの声が熱い。目が、獲物を狙う征服者の目をしている。
「湊斗、湊斗……」
綺麗に傷のなくなった胸を、暫くアディは名残惜しそうに舐めていたが、その舌が徐々に場所を変えていく。
「あ、アディ、だめだ……っ!」
「湊斗、湊斗、良いだろう?」
「だめ…っんっ!あ、ぁあ!」
互いの体に挟まれた場所が、熱を持って存在を主張している。アディは、それをひとつに重ねると、片手で扱きだした。
「やっ!あ、アディ……!!」
いつからだろう、アディとこうして体を重ねるようになったのは。
それは、あまりにも自然なことだった。
アディは当たり前のように湊斗の体中を愛撫し、湊斗を蕩けさせ、そうして彼の体の内側にまで入り込む。
それをいやだとは少しも思わなかった。
むしろ、それを嬉しいと思った。
この美しい悪魔が、自分を欲しがっている。それはいっそ誇らしいほどだった。
このために自分は今迄育てられていたのか、という考えは、湊斗を卑屈にさせることはなかった。逆にその為に自分が見いだされ、育てられたのだとしたら、自分はなんて幸運なんだろうと思った
だって、この美しい悪魔が俺の体をむさぼる為に、生まれたときからずっと自分に尽くしてくれたのだ。自分にそれほどの価値があるなんて、とても信じられない。
「あ、アディ、アディ!だめ…っ!こんな所で、俺、もう……っ!」
「快楽を拒むな。お前は私に与えられるままに感じれば良いのだ。ああ、湊斗。私の湊斗」
なんて声を出すのだろう。アディほどの悪魔が、自分になど。
自分は子供で、ただの人間で、アディと同じ男だ。
アディならば、もっと素晴らしい人がいる筈なのに。
「な、アディ、アディも、気持ち良い……?」
「ああ、もちろんだ」
うっとりと湊斗の体中を舐めているアディに、湊斗は少しだけ不安な気持ちをぶつけてみる。
だって、分からない。どうして自分なのか。どうして自分だったのか。
「本当に?でも、俺だよ?」
「お前だからだ」
「でも俺、ただの人間だし、綺麗なわけでもないし、それに俺、男だよ?」
「それがどうかしたのか……?」
そもそも悪魔や天使の性別は曖昧で、両性皆無や両性具有は当たり前、種族によっては性別が日替わり、という変わり種もいるらしい。そんな彼らからしてみれば、同性同士というのは些細なことなのだと……その説明は、前にも聞いた。
自分は……自分も、アディならば男であっても女であっても性別がなくても両性を持っていても構わない。
だって、アディだから。
誰よりも優しくて、誰よりも美しくて、誰よりも愛おしい、アディだから。
子供の頃からずっと、アディだけが湊斗の全てだった。
自分にはアディしかいない。
でも、アディは?
「湊斗、お前が何を気にしているのかよく分からないが……私の愛情を疑うなど、許さないよ……?」
アディはまるで禁忌など無いように、湊斗の全てを欲しがった。まだ若さの残る雄をたっぷりと喉の奥まで咥え込み、先端の小さな孔に舌を挿れ、後孔の中まで味わう。そのたびに湊斗は体中を快楽でいっぱいにして、アディの名前を呼び続けるしかないのだ。
「あぁ!アディ!アディ、もう……もうイク……っ!」
体の中にある快楽のツボを執拗に嬲られ、根元をぎっちりと抑え込みながら喉の奥で締め付けられては、若い湊斗の体が堪えられるはずなど無かった。
「ひぅっ!や、あぁあぁあ!来る……っ!あ、もう、アディ、も、赦して……!イかせ……イかせてくれ……!!」
根元を抑えられて吐き出すこともできず、それなのに湊斗の体はビクビクと何度も達した。気が狂いそうになるほど気持ち良い。まだ、挿入すらされていないのに。
「アディ!!あぁっ!」
「名前を呼べ、湊斗!私の名前を呼び、私を求めろ!愛してる、湊斗!お前は私の物だ……!!」
何度も指で拡げられた後ろは、アディを欲しがってパクパクと口を開いている。もう我慢なんてできない。そんな理性は、今の湊斗には一欠片も残っていなかった。
「アディ!!アムドゥスキアス!!あぁ、挿れて……早く挿れて、アムドゥスキアス!!貴方を、俺の中に……っ」
そう叫んだとき、ずんと体の奥に衝撃が走った。
それはあまりにも強い衝撃で、始め、湊斗は何が起こったか分からなかったほどだ。
だが、湊斗の体はすぐに歓び、アディを締め付け始める。
体中が歓喜に叫んでいる。嬉しい、嬉しい、と。
人間の湊斗には大きすぎるアムドゥスキアスを受け入れ、奥の奥まで突かれると、湊斗はビクビクと体を震わせ、大きな白い波に攫われた。この波に攫われたら、降りてくることなんてできない。
「あぁぁあぁ!ひっ!!あっ!あぁあぁぁ!!」
絶頂はいつまでも続いた。
夜はまだ長い。その日、湊斗はアディの腕の中で、いつまでも啼き続けた。
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