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ワンコイン[2]
「ここがその方のお宅ですか?」
頷く晄さんと共に訪れたのは、駅からほど近い一軒家。綺麗に手入れされた庭でひまわりが夕陽に染まっている。
「ご在宅だと良いんだけど」
チャイムを鳴らしてしばらく。ガチャリと開いた扉から現れたご婦人は、聞いた通り高齢で。隣の晄さんを認めると驚いたように目を見開いたあと、すぐに笑みを見せた。
「あなたはさっきの…」
「すみません、突然伺ってしまい」
「いいのよ。何かご用?」
門を抜けてこちらへ出てきた彼女は首を傾げる。
「先程いただいたお礼なんですが、そのままというのも忍びなくて…これ、気持ちですので良ければどうぞ」
差し出した小包は洋菓子店のもの。地元で有名なその店名を目に留め、あらあらと口元を覆った。
「そんな、却って気を遣わせてしまったのね」
「いいえ。あなたのためを思って選ぶのも楽しい時間でしたから」
ふわりと破顔する晄さん。元ナンバーワンホストの片鱗が見え隠れして人知れず頭を抱えたくなってしまう。
「うふふ、お上手ね。これからお出かけ?」
彼に笑いかけた後、優しい視線がこちらに向けられて。2人で浴衣を着ていればそう考えるだろう。
「はい。隣町のお祭りに」
「私も昔は主人と毎年行っていたわ、懐かしい」
今はもうトシだから、と家を指さし肩を竦めた彼女。仲睦まじい様子が垣間見えた気がしてほわりと心が温まる。
「それじゃあ…とっておきの情報を教えてあげるわね」
顔を見合わせる俺たちに飛ばされたウインクは、茶目っ気たっぷりでとても可愛らしいものだった。
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