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第10話 クリスマスイブ

 その頃、雪兎はといえば家族でささやかにクリスマスイブを過ごしていた。   「メリークリスマス」    カランと小気味良い音を立ててジュースの入ったグラスで乾杯する。  朝から家族総出で作った料理はどれも頬っぺたが落ちてしまいそうなほど美味しい。  雪兎がクリスマスツリーに飾り付けたオーナメントが優しい電飾の明かりに照らされる。  雪の結晶を象ったガーランドもまさに幻想的な冬にぴったりで、リビングはクリスマス一色だ。  ご馳走にはメインのローストチキンの他に焼きたてのパンや、クリームシチュー、彩りの野菜を添えたポテトサラダがテーブルに置かれている。  毎年、クリスマスイブはこうして家で手作りのご馳走を作るのだが。なんと、今年はクリスマスケーキまで作ることを決めていて、冷蔵庫には出来上がったばかりのブッシュドノエルも控えている。  家族団欒で話に花を咲かせながらご馳走を食べるクリスマスパーティー。  ただ一つ心残りは、ハルを呼べなかったこと。   (ハルも居たら、もっと楽しかっただろうな……)    なんて、ハルのことを考えて一人寂しくなってしまう。   「そうだ、雪兎にサンタさんからプレゼントが届いてるぞ」  そんな僕の気持ちを晴らすかのようにお父さんが笑顔で立ち上がる。   「プレゼント?」  毎年、プレゼントはクリスマスの朝、枕元に置いてあることが密かな楽しみだった。 (それが、もう届いてる?)  サンタさんがもう既にプレゼントを届けていてくれた事実に驚く。 「ふふ、サンタさんがね、言ってたわよ。毎日お手伝いしてるいい子にプレゼントをあげるって」  まるで内緒話をするように小声で嬉しそうに話すお母さんと、小さくラッピングされた箱をお父さんが持ってきた。

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