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第12話 膨らむ気持ち

 クリスマスのご馳走を食べ終え片付けの手伝いも終えた雪兎は、部屋でスマホと睨めっこする。  人生初の自分の携帯。  壊さないようにゆっくりと慎重に指で画面をタップすれば、待ち受け画面が開く。  箱に備え付けてあった説明書を一読しながら、使い方を順番に覚えていく。  待ち受け画面はホーム画面と呼ばれ、指でのスワイプという操作にカメラの機能まで付いている。 「す、すごい……」    ゲーム機を買って貰って食い付くように夢中になる子供の気持ちを今になってようやく理解した。  元々、雪兎はゲームに疎かった。  昔、晴輝の家へ遊びに行った時、ゲーム機を貸してもらい一緒に遊んだことはあるのだが。  車を走らせてレースをするゲームをやった時、盛大にゲーム酔いを起こしたことがありそれ以来ゲーム機はトラウマとなっている。  クラスの子が、最新のゲームについて楽しそうに話すのをいつも羨ましく思っていた。  自分もゲームが好きであれば、もっと友達がいたのだろうか……と。  最近ではこのスマートフォンでもゲームが出来ると聞いたこともある程だ。  今はまだこの携帯にはお父さんとお母さんの連絡先しか入れてないけれど、僕だってこれを機に新しく友達が出来るかもしれない。  そんなことをふと考えて浮かれてしまう。 (でも……)  一番に入れたい連絡先は、もう既に決まっている。  他でもない、ハルの電話番号。  思えば思う程、ハルに会いたくて堪らなくなる。    時刻は21時を回ろうとしている。  いつもならもう布団に入っている時間。  ハルに会いたいという思いは膨らむばかりで寝付くことなんてできないぐらい、目は冴えてしまう。   「ダメだよね……」  今日一日、クリスマスの準備の最中でもずっと心を占めるのはハルのことばかり。  ハルは今何してるのか。  クリスマスイブをハルと過ごしたかったという後悔。  ハルに会いたいという強い思い。 (少しだけ……)    心の中で自分に言い聞かせる。 (ほんの少し、ハルに会いにいくだけ)  ハルに会いたいというとめどなく膨らむ感情を抑えることなんて出来なくて。      ちらりと窓のカーテンを開けて外の様子を見て、目を瞠った。

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