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第17話 涙

 その温かい雫が涙なのだと理解した途端、堰を切ったように止めどなく涙が溢れた。   「っ……ハル」 (好き……)  ハルが何よりも、誰よりも。  初恋だったのだ。   (大好き……)    βだと偽ってまでハルの傍に居たかった。  Ωと知られるのが怖かった。  だって、ハルに見放されたら……きっと僕は生きていけない。   (……愛してます)  絵本の物語だったら、幸せになっていたのかな?  なんて、いつも考えて。  現実は甘くないと突きつけられる。  ハルが女の子と仲良く話す姿を見る度に、僕には無理だと思い知らされるから。    女の子でもなければ、βでもない。  男で、Ωの僕は、ハルの運命の相手にはなれないんだ。    夜の静かな公園には、自分の口から弱々しく溢れ出る嗚咽の音しか聞こえない。  まるで一人きりの世界のよう。        いつの間にか、雪は止んでいて。    空を覆っていた厚い雲もなく。  雲の隙間から覗くまるいお月様が優しい光を放って夜空にポツンと浮いている。  まるで、「一人じゃないよ」と教えてくれるみたいな。    夜空からの祝福のような美しい光景。    その綺麗な光景を目に焼き付けるよう目いっぱい見開き、瞼を閉じれば溜まっていた涙の最後の一雫が流れ落ちる。    時が止まったような静かな空間。    しかし、そんな静寂を割くように。      ――ザクッ    雪を踏む誰かの足音が、聞こえた気がした。

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