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第28話 初めての発情期⑧ ※

 ぱちゅん、ぱちゅんと何処か遠くで音がする。 「あぅ゛、は、はう……や、も……、くぅ、し……」  いま自分がどこに居て、何をされているのかわからない。  頭がぼーっとする。  口をついて出る言葉すら、自分のものじゃないみたい。 (なに、これ……)  ぼんやりと映る視界に、誰かいるのが見える。 「だえ……?」  ハル?  近づいてきた影に、唇を貪られる。 「んんっ、あ……ん、ぁ……はぁ、ん、あっ……んちゅ」  最後に甘いリップ音を響かせて唇が離れる。  ダメだ、うまく頭が働かない。  手も足も、指先すら一本も動かせない。  お腹から何かが抜けた感じがして、目を閉じる。  瞬間、身体をうつ伏せにされて、ぽすんっと身体がベッドに深く沈む。  何か、頭の片隅で嫌な予感がするのに、動ける気力が1ミリもない。  その直後だった。  再び腹の中が圧迫されるような後孔に何かが入る感覚と。  ぺろり、  舐められた、首筋。  いや、首筋というよりも(うなじ)と呼ぶべきだろうか。  オメガの唯一の急所。  アルファと(つが)うことを恐れるオメガが守るべき場所。  その場所を、今、舐められている。  一気に目が覚めるような、ようやく意識が現実に引き戻される。 (だめ……そこは!)  身体が恐怖から震える。  そんなことあってはならない。  オメガの僕が、そこを噛まれたら……。   「――これで、逃げらんねえよ」  耳の後ろから聞こえた声はハルとは似ても似つかない程の低い声。 (やだっ……!)  逃げろと頭の中で警鐘が鳴り響く。  けれど、身体はやはり動いてはくれなくて。  項をザラザラとした舌で舐められたそのすぐ後に、ずぷりと鋭い歯が肌を突き刺した。

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