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第29話 番契約① ※

 まるで、食い千切られるかのような鋭い牙が、項を刺す。 「っやあああぁぁぁ!!!!!」  噛まれたところから、ポタポタと血が零れているのだろうか、肌を伝う雫は赤く、真っ白なベッドに鮮血が滲む。  それでも、男は今もなお項を噛んで離れようとしない。 「や、やだああぁぁぁぁ!!!」  叫んでも、泣いても、退いてくれない。  これは現実だろうか?  悪い夢であってほしいのに、項を刺す鋭い痛みが現実だと突きつける。 「っは、ひゅ……っあ、ああぁぁぁぁ、んぐっ、あぁっ……」  同時に動きだす、下肢の動き。  パンッ、パンッと、肌を打ち付ける音。 「やあっ、う、う゛ぅ……おえ、っ、も……や」  これが現実なんて信じたくない。  こんな……。 (誰か夢だと言って……)  遂には気持ち悪さが押し寄せて、口から吐瀉物が吐き出される。 「お゛えぇぇ……、は、っぐぇ、あ……は、っあぁ……」  それでも、動きは止まってはくれない。  真っ白だったベッドは見るも無惨な状態だ。 「はぁ、っ、うぅ……は……も、ゆぅ……ひ、へ……」  泣きながら許しを乞いながら。    ついには、ぐわりと目眩がして雪兎はついに意識を手放した。

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