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第34話 目覚めと絶望④
「な、で……しっ、て……」
声はまともに紡げずに、渇いた声しか出ない。
「あーあ、震えちゃって」
男はそんな僕を見て「かわいー」と呟く。
頬をつんつんと男の長い指でつつかれる。
「っ……」
男の一挙一動その全てが恐ろしくてビクビクと恐怖で体が震える。
「何で知ってるかって?」
男は口元だけで笑みを作ってから、一呼吸置いて。
「全部調べたから」
と、さも当然のことをしたかのように言う。
「ユキの名前も、学校、住所、生年月日、家族構成。あー、あと……オトモダチのハルって奴も、全部知ってる」
ドクドクと心臓が煩く嫌な音を立てる。
(なに……この人、調べたって……なんで……)
「何も知らないユキに一つ良いこと教えてやるよ」
そう言って耳元に口を寄せて放った男の言葉は、地獄に突き落とすような、あまりにも残酷な一言だった。
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