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第36話 初対面①
「入れ」
目の前の男が短く返事をすると、入ってくる新たな人たち。
「失礼致します。例の者たちを連れて参りました」
先頭で入って来た黒髪で長身の眼鏡をかけた男性が淡々とした声で頭を下げる。
更にその後ろに四人の男の人たちが並ぶ。
皆一様に背が高く、整った顔立ちをしていて全員黒いスーツを身に纏っている。
その四人の男全員の視線が自分に向いたことで我に返る。
今の自分の姿は何も身に纏っていない裸体だ。
それに気付いたと同時に、慌てて近くにあったシーツを頭まで被る。
「てめぇら、人のイロを勝手に見るな、躾がなってねえな」
「「「「すみません!!!」」」」
部屋に響く男たちの謝罪の声にビクリと身体が震える。
(家に帰りたい……)
内心、そう思わずにはいられない。
「悪かった、ユキ。顔を見せろ」
布一枚を隔てて男が言う。
「……………………」
けれど、その声に素直に従う程、相手を信用なんてしていない。
寧ろ男の信用度はマイナスだ。
「ユキ、二度はない。顔を見せろ」
しかし、男もまたそう簡単に諦めてはくれないらしい。
男の一言に部屋の温度が僅かに下がったような気がして仕方なく、ちらりと窺うようにシーツから顔を出す。
そして、すぐに後悔した。
間近にある男の顔。
伸びてきた手が顎を掬い撫でる。
親指で唇をなぞられて、ゾワリと肌が総毛立つ。
男の顔がゆっくりと近付いて、チュッと甘めのリップ音を響かせて唇が触れる。
顔を逸らしたいのに、男の手がいつの間にか頬に移動されて有無を言わせない力に逸らすことも適わない。
ジュルリとわざと聞こえるように大きな音を立てて口内を貪る男の舌。
「ん゛ん゛っ、んーーー!」
(やだ、やだっ!! 人がたくさん居るのに!)
唯一動く手で、抵抗を試みるも、その手すらベッドに縫い付けられ、指も絡ませられて。
まるで、恋人繋ぎのようにギュッと握られた手を今すぐにでも切り落としてしまいたかった。
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