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第37話 初対面②
男の唇が離れたのは息も絶え絶えになったとき。
てらりと銀糸を引いて唇が離れる。
抵抗する気力が無くなった雪兎を男がベッドに座ったまま抱き抱える。
「こいつが俺の番。ユキ、挨拶しろ」
「っ……う、っはぁ……ひぐ、っ、ぅ……は、ぁ……か、え……して……っ」
悔しくて、やるせなくて、消えてしまいたい。
「帰して」と涙を流す雪兎に男はそれでも容赦ない言葉を放つ。
「帰してだ? 聞き分けのないユキにわからせてやろうか」
そう言うと、耳元でゾッとする低い声で囁く。
「今すぐ、こいつらの前でぶち犯してやってもいいんだぞ」
その言葉にヒュ、と息をのむ。
この人なら本当にやりかねない。
あまりの恐ろしさに涙なんて一瞬で引っ込んで、慌てて首を横に振る。
「だよなあ? なら、ほら挨拶しろ」
「っ…………」
男と向き合うように抱き抱えられていた雪兎は、シーツを身に纏ったままのそのそと立っている男たちに向きを変え、頭を下げた。
「……し、ら……はま、……ゆき、と……です」
ゆっくりと顔を上げ、その人たちの顔を見る。
一人は目を見開き、八重歯を見せて怪しく笑う人。また一人は口元を抑えていて、もう一人は特に反応はない。
そして、一番前に立つ眼鏡をかけた男性もこれといった反応はなく、無言で一歩前に出ると恭しく頭を下げた。
「お初にお目にかかります。私は碓氷深影 と申します。以後お見知り置きを」
「……は、はい」
なんと返事をするべきか迷ったが、一応頷いておく。
「後ろに控えている彼らが、今後、白濱様のお世話係をさせて頂きます」
その言葉に男性の後ろにちらりと視線を向ける。
先程も見たが4人の男がいる。
(お世話って、なに……?)
こんなところにずっと居座り続ける訳にはいかない。
(早く、家に帰りたい)
ただただ、そう願わずにはいられなかった。
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