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第39話 裏の顔
ガタガタと自然と体が震える。
男が怖くて、冷や汗が流れる。
視線を合わせることすら怖くて顔を俯かせる。
(こわい、こわい、こわいこわい……!)
恐怖で思わずぎゅっと目を閉じて、体を固まらせる。
男が、京極財閥の人間と知ってから生きた心地なんてまるでしない。
日本屈指の京極財閥。その財閥には裏の顔があるというのを知っているから。
テレビのニュース番組や、ネットでも取り上げられる裏社会。
日本を影で支え、裏の組織とも呼ばれる。いわゆるヤクザというもの。
夕方のニュース番組で見かけたことがある。
『京極組の構成員による街中の発砲事件』
京極財閥と京極組。この両者は日本の表と裏を支配する。
そしてそのどちらのトップの名も京極霙。
つまり今、目の前にいるこの男なのだ。
こつん。おでこに硬い何かが当たる。
たったそれだけで、ヒッと恐怖の悲鳴が漏れ出る。
「……ん、熱はねえな。飯まだ食ってないだろ。腹になんか入れて休んでろ、後で持ってこさせる」
こつんと当たったそれが、京極さんのおでこだと少し遅れて気付く。
「じゃあな、仕事行ってくる。大人しくしてろよ」
バタンと閉じられた後にカチャリと鍵の締まる音を最後に部屋の中を静寂が支配した。
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