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第41話 帰りたい
ベッドに戻り部屋を見渡す。
広い部屋にはベッドと向こうには大きなテレビ、シックなソファにテーブルもある。
普通ならこんな豪華な部屋にいて、寛ぎ放題だと思うのに。
今の僕には早くこの部屋から出たいという願いしか感じない。
部屋はやけに豪華なのに、窓は1つもなく閉塞感がある。
まるで逃げることを許さないようなその造りに身震いしそうになって、拳をぐっと握る。
帰る為の出口は1つしかない。
その扉の前に立ち深呼吸を1つすると、ドアノブに手をかけた。
ドアノブを回そうとするよりも先にコンコンというノックの音の後に誰かが入ってくる。
しまった、と思ったが遅い。
平然と何も無かったようにくるりとドアに背を向け蹲る。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
「失礼致します。……白濱様? 大丈夫ですか!?」
「どないしたん?」
「白濱様が――」
扉が開かれるすんでのところで蹲り相手の様子を伺う。
2人の男性が何やら話し合っているのが聞こえる。
「白濱様、少し失礼致します」
そう言って顔を覗き込んできたのは先程紹介された人の一人、リトさんだった。
「顔色が悪いですね、一度ベッドに戻りましょうか」
その言葉に、ふるふると首を横に振る。
この人たちなら聞き入れてくれるだろうか。
帰りたいと言ったら帰らせてくれたりしないかな。
咄嗟に蹲ったが、正直本当に体はだるかった。
「起き上がれませんか? 私がベッドまで運んでもよろしいでしょうか?」
嫌だ。
もう、やだ。
帰りたい……。
「かえ、……る」
この人たちを困らせてしまうのはわかってる。
でも、早く家に帰って両親の顔をみたい。
だるい体に鞭を打って。
自力で立ち上がる。
なんだか頭がボーッとする。
部屋の出口には黒いスーツを着た人たちが沢山いて、どうやっても逃してくれそうにはない。
「っ、は、ぁ……はぁ」
出口はもうすぐそこで、あと少しというところで体がよろめく。
「よっと、」
よろめく体を支えたのは、ニヒルに怪しく笑う先程紹介された一人のルカさんだった。
「……君を帰すんを若が許さへん。堪忍な」
最後にそんな声が聞こえて、そこで意識がぷつりと途切れた。
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