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第42話 悪夢

 目を覚ませば、いつも通りの自分の部屋のベッドの上だった。  なんだか悪い夢を見ていたような気がする。 「っ……お父さん、お母さん!」  勢いよく部屋を飛び出し、下に降りてリビングへと向かう。  リビングのドアを開けた先には――    「ひっ……」  一人の男がテーブルに長い足を乗せて呑気に鼻歌を歌っていた。  それも愉快そうに。  その顔には見覚えがある。  そう、この人は……京極霙。  何でこの人が家に居るのか、両親の姿も見当たらない。   (嫌な、予感がする)  すぐに逃げようと扉に向かうも固く閉ざされたドア。 「やだ、誰か……! 助けて、や……やぁ、ハルっ!」  ドアをバンバンと叩き助けを求める。  助けを求めたのはハルの名前。  『なにかあったら俺の名前を呼んで』  そう笑って言った幼いハルの姿を思い出す。 (ハル、助けて……!)  けれど、そんな願いも虚しく。  男に背後からそっと抱きしめられると項にがぶりと鋭い痛みが走った。

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