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第43話 吸い込まれる瞳

「ん、ぅ……」  ぼんやりと上手く働かない頭と寝ぼけ眼で視線を彷徨わせる。    見慣れない天井に、肌触りの良すぎる布団。  ここが自分の家でないことはすぐに察することが出来た。  視界の隅から「起きたか」という低い声に体が一瞬で強張る。 「身体、平気か?」  泣く子も黙るあの日本一の極道の若頭、京極霙が眉間に皺を寄せて尋ねるのに、ヒュッと思わず心臓が縮まってすぐに「はい」とガラガラな声で返事をする。 「待ってろ、水持ってくる」  未だベッドの上で寝たままの状態の自分は情けなくも自力で起き上がることができない。  それもその筈、左腕には何故か点滴をされている。 (何、この状況)    頼めることなら誰かに説明を頼みたい。  何があったんだっけ? と記憶を辿ろうとしても頭がまともに機能してくれない。 (頭が痛い……)  脳が情報を上手く処理しきれてなくてパンクしてしまいそうだ。 「そのままじゃ水飲めねえだろ」  ペットボトルを持ってやってきた京極さんがそう言いながら、近づいてくる 「……、っ」  何をされるか怖くて体を強ばらせることしかできない僕に、京極さんがベッドの傍に寄って顔を寄せてくる。  恐怖と不安で俯いた顔をそっとひと撫でされて、くいと顎を固定されれば、その端正な顔と視線が交わる。  怖い人なのに、なんて綺麗な人なんだろう。  整った眉に、美しい鼻筋。  逸らすことの出来ない蜂蜜色の瞳に吸い込まれそうになっていれば、やがて男の煙草とムスクの匂いに包まれて。  気付けば唇にキスをされていた。

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