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第44話 水分補給という名の…
美しい瞳に捉えられ、引き込まれて気付くのが若干遅れた。
京極さんの纏う煙草と香水の香りに包まれ「えっ」と気付いた時には唇同士が触れていて。
驚きによって半開きになった唇の隙間から、京極さんがいつの間に飲んだのであろう冷えたお水が口の中に少量ずつ送られてくる。
ピチャ、ピチャと口内で絡められた舌から丁寧にゆっくりと水分が行き渡る。
「んっ、はぁ……う」
ゴク、ゴク。
水を求めていた体は素直に水分を飲み込む。
唇を食べられてしまうぐらいに、ねっとりと隙間なく舌を絡め取られてゆっくりと透明な糸を引いて離れていく。
やがて水が無くなると、男が再び水を飲み。
再び再開される水分補給という名の濃厚なキス。
抵抗なんて出来なかった。
そんな力どこにも無い。
頭ではこんなことダメだと思うのに体は実に正直で。
渇いた喉に啄むように何度も何度も時間をかけて丁寧に水を流し込まれると、寝起きのガラガラだった声は次第に潤いに満ちたしっかりとした声に変わっていく。
「あ、っも、いら、な……んは、っ、ちゅ、んぁっ」
「はっ、やっぱユキの声いいな」
最後のキスが終わった後、そう言って笑った京極さんの顔を見て「この人もこんな顔して笑うんだ」なんて頭の片隅で思った。
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