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第46話 イロ

「っ、ぐす……あ、りがと、ございます」  一体、どれだけ泣きじゃくったのか。  ようやく涙の雨が止んだころ。  お礼を言ってその人から離れる。 「はぁ……」  大きな溜め息にびくりと体が震える。  その溜め息の主が、京極さんだったからだ。 「あのさ、溜め息吐きたいのはこっちだよ! 何してんの!? いたいけなオメガの子相手にそんな殺気出したらダメだって俺言ってるよね!?」 「うぜぇ」 「はぁ? あのなぁ、そっちが勝手に呼び出しといてうぜえってお前何様!?」 「ギャーギャーうるせえな、とっととそれ外してやれ」  京極さんがそう言いながら僕の腕にある点滴へ視線を向ける。 「コイツ…………、コホン。あ、あー……ごめんね? 一旦点滴外すね」    * * *  慣れた手付きで点滴を外して貰いゆっくりと起き上がる。 「体調はどう? もう熱は下がったかな」 「はい。あ、の……すみません、僕――」  迷惑をかけてしまったことを謝ろうとすれば、大きな手の平で優しく背中を撫でられる。   「いいのいいの! 全部コイツのせいだから。さあ、もう夜も遅い。君も早く家に帰って――」   「ダメだ。そいつは俺のイロだ。帰るとこなんざねえよ」  促されて帰ろうとすれば、苛立った京極さんの声が部屋に響く。  その一言に隣の男性は歩みを止めた。   「はあ? イロってお前、冗談も程々に……」  「用が済んだらさっさと帰れ、報酬は払っただろ」  ぎゅっと拳を握る男性が、わなわなと震えているのがわかる。 「お前、本当にこの子を……? どうみてもまだ学生じゃないか!」 「それがどうした」 「まだ子供の……未成年に手を出すなんてどうかしてるっ! 霙、これは立派な犯罪だ」  隣の男性がポケットからスマホを取り出す。 「ハッ、警察にでも通報するって? 馬鹿だなぁ、桐原。この国に、俺に歯向かえる奴なんざいねえよ」  男の鋭い眼差しが男性、桐原さんに向けられる。  しかし、それは一瞬のことで、すぐにその目は僕へと向いた。 「物わかりのいいユキならわかるよな? こっちへ来い」  ふんぞり返って椅子に座る京極さんが射貫くように僕を見て呼ぶ。  それだけで、身体は硬直して動けなくなる。 (やだ、こわい……)    すぐ傍にいる桐原さんが「従わなくていい」というように首を横に振る。 (わかってる。こんな酷いことをする人のことの言うことなんか聞くわけがない)  僕は家に帰るんだ!!

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