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第47話 手折られた花
こんな所になんか居ちゃいけない。
僕は家族が待つ家に帰るんだ!!
そう心の中で強く思ったのに。現実はあまりにも残酷だ。
男の威圧感が増し、もう一度「ユキ」と名を呼ぶ。
「二度はない。そいつがどうなってもいいのか?」
その一言にビクリと体が震える。
(……あぁ、僕はバカだ)
目の前にいるこの人が誰なのか忘れていた。
日本を表からも影からも支え、多くの者を従える。
京極財閥の当主であり。
日本を誇る京極コーポレーションのトップ。
朝は社長という広い顔を持ち。
夜になればたちまち闇の中で働く者全てがこの男の配下につく。
天下の極道の若頭。
(そんな人に逆らうなんてあまりにも無謀すぎる)
目の前が黒く塗り潰されたように真っ暗になる感覚。
逃げ場なんてどこにもない。
一般人をも殺すことを厭わない組員を統べるこの男に歯向かったらどうなるかなんて、少し考えればわかるのに。
(僕がここで逆らったら……目の前のこの人、桐原さんにも危害が及ぶ)
それは絶対に嫌だった。
たった今初めて会った人だけど、僕が泣いてしまった時に寄り添って一緒に家に帰ろうと言ってくれた桐原さんを傷つけられるのは絶対に嫌だ。
僕が素直に従えば、桐原さんをきっと見逃してくれる。
(それなら――)
扉へと向かおうとしていた体を、座っている京極さんへと向ける。
そしてゆっくりと、京極さんの傍へと向かう体。
「ダメだ! 行くな!」
背後から、桐原さんの声が聞こえる。
(桐原さん……)
呼び止められて動いていた足が一瞬止まる。
本当は振り返って、桐原さんと一緒にこんな場所から逃げ出してしまいたかった。
けれど。
「来い」
あと数歩先の距離にいる京極さんの声で、意識が引き戻される。
(桐原さんだけでも無事でいて欲しい)
それが僕の願いだから。
ゆっくりと一歩一歩、京極さんの元へと足を進める。
思うのはクリスマスの日の後悔。
(あの時、家を出なければ良かった……)
後悔しても、もう遅い。
この人に出会ってしまったのが運の尽き。
手折られた花は一生、野には戻れないように。
この男に自由を奪われた雪兎もまた、家には帰れない。
もう目の前にいる京極さんの傍へと辿りついた僕は、京極さんに腰を抱かれ、膝の上に横抱きの状態で無理やり座らせられた。
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