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第54話 無力な自分②(side.桐原)
霙が白濱くんへと視線を向ける。
それだけで白濱くんの体がビクリと震え、不安そうに揺れる瞳。
従わなくていい、というように俺が首を横に振れば白濱くんは不安な瞳を閉じ込めて、やがて何かを決意したような力強い瞳を宿す。
(そうだ、それでいい。俺が君をここから解放してみせる)
けれど、そう思ったのは一瞬で。
霙のアルファの圧が俺の動きを止める。
まるで心臓を鷲掴みされるようなビリつく空気。
「二度はない。そいつがどうなってもいいのか?」
底冷えするような一言。
ギロリとした瞳からは俺への殺意が感じられる。
息が止まってしまう程の冷たい空気が部屋を包む。
一歩でも動けば殺すといわんばかりの殺気がひしひしと伝わっきて。それだけじゃない、霙のアルファとしてのオーラが指先一つをも動かすことを封じ込める。
まるで捕食者に捕まって動けない獲物のように、体の自由が利かない。
それは隣にいる白濱くんも同じなのだろう。
(くそっ……!!!)
すぐ隣にいるのに、どうしてあげることも出来ない。
永遠にも感じられる程の長い、長い沈黙。
そんな冷ややかな空気を破ったのは、隣で震える小さな体だった。
今すぐにでも逃げ出してしまいたいだろう、白濱くんは、重い足を引きずるように一歩、また一歩と霙の方へと向かう。
(っ……なんで)
霙の視線が白濱くんへと向いて、僅かに解かれた殺気。
「ダメだ! 行くな!」
思わずそう叫んでいた。
俺の一声で歩みを止める白濱くん。
けれど、その顔が俺を振り向くことは無かった。
「来い」
霙が再び命令すれば、白濱くんの足は再び霙の方へと向かう。
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