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第55話 密かな決意(side.桐原)
自ら犠牲になっていった白濱くんに、俺はなんて無力なんだと思い知らされる。
(……どうすれば、)
霙のすぐ前に立つ白濱くんは、抵抗することもなく霙の膝の上に座らせられて。
そこには先程までの力強い瞳はなく、何もかも諦めたようなそんな生気のない瞳。
どうすることも出来ない俺は、ただ離れた場所で見ていることしかできない。
(……俺のせいで、っ)
霙が白濱くんに耳を寄せて何かを囁いている。
ここからでは何も聞こえない。
本当に霙は白濱くんをイロにする……?
一体、いつまで?
霙があの子に飽きるまで?
やがて、白濱くんが霙の唇に軽いキスをする。
(俺が……、)
それは次第に深い口付けへと変わる。
霙が白濱くんの後頭部を掴み無理やりするような荒々しいキス。
見たくなかった。
俺のせいで、俺を助ける為に……自ら霙の元へと行った白濱くんを。
ジュルリ、ちゃぷっ、絡め合うキスの音が室内に厭らしく響く。
どれだけその時間が続いたのか、ようやく手足の自由が効いた俺は膝からその場に崩れる。
地面を力無く見つめていると、やがて影が落とされて。
見上げれば意識を失った白濱くんを抱えて霙が目の前に立っていた。
「診てくれて助かった」
それだけ言って奥の扉へと消えていく。
一人、残された部屋で俺は何も出来なかった自分に無力さを痛感する。
「………………っ」
それと同時に沸き立つ感情は、怒りとある決意。
(俺が、必ず白濱くんをここから解放する)
日本屈指の京極に歯向かうことがどれだけ無謀なのかなんて嫌でも知ってる。
それでも、まだ幼い白濱くんの人生を霙の手で簡単に潰してしまうことが許せない。
高層階のビルの上、逃げ場なんてどこにもない鳥籠のような場所を後にして、俺はこれからの作戦を練った。
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