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第56話 閉ざされた扉
「う、んん~、」
ぼんやりとする眼とまだ覚醒しきってない頭。
ぱちりと再度瞬きして、視覚に周囲をはっきりと捉える。
家よりも広く、高級感溢れる部屋。
テレビもなければ、窓すらない。
テーブルとイス、今自分のいるベッドがあるだけのシンプルな部屋。
「はぁ~……」
朧げながらも昨日の出来事ははっきりと覚えている。
自分は昨日、日本を牛耳る財閥そして組を統べる男、京極霙に捕らわれ弄ばれた。
キスだけじゃなく、性行為まで。
その出来事を思い出し、ハッとする。
避妊薬!
オメガである自分が、あんな行為をされればいつ妊娠したっておかしくない。
考えてゾッとしてしまう。
まだ学生の身でありながら身ごもるなんて考えただけでもゾッとする。
ベッドから早々に降りて、ドアへと向かう。
――ガチャガチャガチャ
ドアノブを押しても引いてもピクリともしないドアに絶望感を感じる。
(どうしよう……)
あんな男の子共なんて欲しくないし、今すぐここから出たい。
怖い。
一体、自分はどうなってしまうんだろう。
シンと静まり返る部屋にいるせいで、その不安は益々大きくなる。
窓がない部屋では今自分がどこにいるのか、昼か夜かさえわからない。
時計すらない部屋は秒針の音もなく、自分の心音だけがどんどん増していくのが嫌でもわかった。
自分の唯一の所持品だった新品のスマホも、ハルへのプレゼントもどこにも見当たらない。
どうなってしまうんだろう……。
その不安は一度生まれればどんどん大きくなって、恐怖となる。
現に今の自分の体は不安と恐怖に押しつぶされそうにガタガタと震えていた。
「だ……」
震える体と心を叱咤するように声をだしてみる。
「だれか……っ」
震え混じりながら出した声は静かな部屋に溶けて消える。
それでも、
(助けを、呼ばなきゃ)
扉越しにでも誰かに助けを求める。
それは小学校の防犯訓練の時に習った知識。
『誰でもいい、助けてくれる人はきっといる』
『諦めず、大きな声で助けを呼び続けて』
そう言っていた講師の先生の言葉が、頭の片隅に確かにあった。
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