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第59話 残された道は

 自分は今、お漏らしをしてしまった。 (いくら我慢出来なかったとはいえ……)  その屈辱的な恥ずかしさで今すぐ消えてしまいたかった。  この歳にもなって自分がお漏らしをしてしまうなんて屈辱以外の何ものでもない。  ただ、自分しかこの部屋にいなかったことだけが唯一の救いだった。  助けを呼ぼうにもこんな、みっともない格好を晒したくはない。  しかし、このまま一生この部屋から出れないなんてことも嫌だ。  この絶望的な状況に涙はどんどん溢れていく。  この部屋に連れて来られてから、怒ったり泣いたり、不安になったり、辱められたり、いい思い出なんて一度もない。  そんな部屋で一生を終えるなんてことも嫌だった。 (誰に助けを求めればいい?)  お父さんも、お母さんだっていない。  大好きなハルだっていないんだ。 (僕が助けを求めて助けてくれる人……)  そうだ、桐原さん!  いや、でも桐原さんをまた巻き込むことなんて出来ないし……。  最終的に頼ることの出来る人なんて、この部屋に僕を閉じ込めた張本人でもある京極霙しかいない。  あんな人に助けを求めるくらいなら……っでも、助けて貰えるなら頼るしかない訳で…………。  下半身が濡れてしまったせいで冷えてきた。 「はぁ、っ……はぁ、」  残された道は1つしかない。 「……っ、」 (呼んだって、助けてくれる保証なんてない) 「き、」 (それでも、今の僕にはあの人しかいないから……) 「きょ、ごく……さん、」  そう口に出してみる。  憎い相手の名前を呼んで、すぐにゾッとした。  まるで体が拒否反応を示すかのように。名前を呼んだだけで全身に鳥肌が立つ。  やっぱり今のは無しだ。  あの人なんか頼るべきじゃない。 (自力でどうにかしてみせる…!)  そう再び意気込んだのと同時だった。 ――ガチャリ  今まで開くことのなかった扉が開いたのは。

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