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第60話 これ以上ない恥辱

――ガチャリ  そんな音とともに今まで開くことがなかった扉が開いた。  びっくりして体が反射的に固まる。  地べたにぺたりと座っている雪兎の前には、  今、最も会いたくない相手である京極霙、本人がまるで見下ろすように立っている。 「あーあ」  その高い身長で見下ろされると恐ろしい。  霙は雪兎を見るなり、口の端を上げ軽く笑った。 「悪い子だな、ユキ」  そう言って、身を屈めて近づく霙に、雪兎はカァっと赤くなる。  それもそうだ。たった今、お漏らししてしまったばかりのこの現場を見られて平気でいられる訳がない。  あまりの恥ずかしさで目の前の男の顔すら見れない。 (今すぐ消えてしまいたい……)  そう思わずにはいられない。  そんな雪兎の心を知ってか知らずか、霙は更に距離を詰め、あろうことかその水溜まりに片膝をついたのだ。  霙の履いている高そうな靴は汚れ、上質なスーツのスラックスにもシミが広がる。 「ぁ、……ぁっ、」  自分のした粗相で汚してしまったこと。その恥ずかしさと居た堪れなさ。 「ご、め……なさ、ぃ」  尻すぼみになりながらも謝る雪兎の頭を優しく撫でた霙。まるで偉いと褒めるかのように。  あまりの恥ずかしさに泣きじゃくる雪兎の冷えて震える体。  その体を軽々とか抱き抱え霙は風呂場へと向かう。  これ以上ない程の恥ずかしさを味わった雪兎。  しかし霙の更なる一言でそれはどん底をいく。 「お前たち、今すぐそれを片付けろ」  そこにいたのは霙一人ではなかったのだ。  忘れていた、その人たちを。  霙の指示で雪兎の世話係となった4人の男たち。  その人たちに先程、雪兎のした粗相を片付けさせる霙の残忍さ。  ここにいれば、そんな人としての尊厳すらも失ってしまいそうな気がした。

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