63 / 63

第61話 白濱雪兎の存在

 霙に抱かれたまま風呂場へ連れていかれる雪兎の顔は恥ずかしさで耳まで真っ赤だ。  そんな顔を見られたくなくて、雪兎は大嫌いな筈の霙の胸板に顔を寄せ隠している。 「っ、ふぅ……ひ、っ、ぐす」  ここまでの辱めを受けた雪兎は先程から泣いてばかりだ。 「服脱がすぞ」  そんな霙の声も今の雪兎には聞こえていない。  泣いている雪兎とは裏腹に霙の心は喜びで満たされていた。  こうして雪兎自ら霙に縋りつく様は勿論のこと。  先程、雪兎が自分の名を呼んだこと。  雪兎は知る由もないが、全てはこの男……霙が仕向けたことだ。  雪兎が囲われているこの部屋には何台もの監視カメラが設置されている。もちろんそんなこと当の雪兎は知るはずもない。  雪兎が部屋から出られず不安になり助けを求めていたのも、雪兎がした粗相も全てこの男は"観て"いたのだ。  だが、何故霙は雪兎の助けを求める声を聞いてすぐに助けなかったのか、答えは簡単だ。  雪兎自ら、霙に助けを求めるまでこの男は静観していたのである。    雪兎が「京極さん」と呼び自分を求めた。  霙と名前で呼んで欲しい気持ちもあったが、それは追々。  なんともこの男は狂気じみている。    愛だの恋だのに一切の興味もなかった若頭が。  今では一人の少年に夢中な様は、配下である羅刹の4人も度肝を抜かされている。  いつもなら側近である碓氷に風呂の用意をさせるところを、今では雪兎を抱えながら自分で風呂の湯を張っている。  人を顎で使い、命令するのが当たり前だった若頭が好きな人の為に献身的になるのを見て、白濱雪兎の存在は若頭にとって大きいのだと実感する。  羅刹を発足したのも全ては若頭の愛人を守る組織として。  組の内部だけじゃなく、外部にも白濱雪兎の名が知れ渡る日はそう遠くないことを

ともだちにシェアしよう!