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第62話 ささやかな抵抗

 冷え切った体に、暖かいお湯を足元からかけられる。 「っ……」  びっくりして、体が無意識に震えてしまう。 「悪い驚かせたか?」  耳元でそう声を掛けられて素直に頷く。 「洗うだけだから、大人しくしてろ」 (本当に何もしない?)    半信半疑になりながらも、抵抗する気力などほぼなく大人しくその言葉に従った。  ぴかぴかの鏡の前。  バスチェアに座らせられて、後ろには京極さん。 「服、脱がすぞ」  自分で脱げます! と言いたくなったけど、体は今も尚震えていて服のボタンだって自分でうまく外せそうになかった。  密室の浴室で二人きり。  自分は服を脱がされていって、今はズボンとパンツを下ろされていた。 「っ!」   やはり見られるのは恥ずかしくて、身を捩ってしまう。 「ユキ」    「……!」  やめて欲しい。ハルにしか呼ばれたことのない愛称で、呼んで欲しくない。  あれは二人だけの特別な呼び名なのに。 「何考えてる?」  その言葉で、ハッとする。  鏡越しから顔を見られて、目を逸らしたいのに逸らせない。  アルファのオーラが許してくれない。 「言え。何考えてた?」  先ほどまでとは違う強い口調。 「っ、……ぁ、」 (怖い……)  目の前のこの男が。 (もしここでハルの名前を出したら?)  今度はハルが狙われちゃうかもしれない。

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