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第63話 恐ろしい人①
もし僕が下手にハルの名前を口に出して、京極さんがハルを標的にしたら?
(この人は、普通の人じゃないんだ)
天下の極道の若頭。狙われたら僕のように拉致監禁されてどうなるかわからない。
「……び、びっくり……して」
(落ち着いて……)
鏡越しに視線が射貫かれたまま答える。
「……で、でも……もう、ひ……ひとり、で、……だ、いじょうぶ、で……」
「あ?」
(こ、怖い……!)
京極さんのその端正な顔の片眉がピクリと上がって。
「大丈夫じゃねえだろ」
そんな京極さんの一声とともに、顔をがしりと片手で掴まれる。
後ろから顎を掴まれたまま、右頬、左頬と手でくいっと動かされ。
「見てみろ、顔色が悪い」
京極さんの目から瞳を逸らし鏡に映る自分の顔を見れば、それは青ざめていた。
「体だって、ほら」
次はするりと、首筋を撫でられて……。
「震えてる」
そう耳元で囁かれる。
「…………ぁ、」
「ユキは何もしなくていいから」
そう言って今度こそズボンを全部脱がされた。
顔が青ざめているのも、体の震えも。
全てはこの男が恐ろしいから。
体調が悪くて顔色が悪いんじゃないし、震えている訳でもない。
目の前の京極さんが怖いんだ。
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