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第69話 お願い

 胸に密かな闘争心を燃やしていた雪兎。  ガチャリと音がして、リトさんが帰ってきた。 「ただいま戻りました」 「お帰りなさい……!」  部屋に一人だとやはり心細いから、誰かがいると安心する。 「あ、あの、リトさん……!」  意を決してリトさんに声をかける。 「はい、どうかなさいましたか?」  変わらない優しい微笑みにホッと胸を撫でおろし。    いざ訊ねてみる。 「あ、の……実は、お願いがあって……」  オドオドしてしまいながらも、はっきりと言う。 「今の日時を教えてくれませんか? この部屋何もなくて……せめて時間がわかるような、時計とかってありますか? できればカレンダーも欲しくて……!」    開口一番に今の雪兎にとって知りたいことと、必要な物をお願いしてみる。 「それから、ひ、避妊薬をください。このままじゃ、子供ができちゃう……」  避妊薬の服用は性交渉から72時間。つまり三日以内だ。  時間と日にちの感覚がない今の雪兎にとって、それは急を要していた。 「は、早くしないと……」 「白濱様、まずは一度落ち着いてください」  矢継ぎ早に言う雪兎を落ち着かせるように背中をゆっくりと撫でられる。  一度深く深呼吸をすると、目線が合うようにして跪くリトさん。 「まず、白濱様からのお願いですが。若……京極様からの許可が下りない限り勝手にお渡しすることはできません。申し訳ありません。今の日時を教えて欲しいというのも出来かねます」  その言葉に絶句する。  京極様の許可って?  こんな時間の感覚も、物もない部屋で過ごすなんて気が狂ってしまいそうだ。 「せ、せめて避妊薬だけでもください、お願いします……!」  それでも尚、食い下がる雪兎にリトさんは眉を下げ首を振り言う「それはできません」と。

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