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第70話 気まずい空気

「お願いしますリトさん、避妊薬だけでもください」  何度も懇願しても、リトさんが首を縦に振ることはなかった。  たった今、強くなると決めたばかりなのに気を緩めると泣いてしまいそうだ。  何の力も、権限も持たない今の雪兎は、ただ何もないこの部屋で京極霙を待つことしかできない。 (どうすればいいんだろう……)  頼みの綱は最終的にはあの憎い男しかいないのだ。 「外に出るのもダメですか?」 「いけません」  美しい姿勢で立ったまま傍に控えているリトさん。  リトさんは僕の監視役なのだろうか。    一人でいるよりリトさんという話し相手がいるだけ寂しくはないけれど……。  またこの間みたいな誰の助けも来なくて、あんなみっともない思いをするのは嫌だった。 「何かすることとかありますか?」 「白濱様はごゆるりとお過ごしください」  返される言葉は丁寧なのにどこか突き放すようにも聞こえてしまう。 (ごゆるりって言ってもなぁ……)  ずっと監視された状態じゃ落ち着かない。  部屋にいても何もすることがない雪兎は気晴らしにリトさんと会話することにした。 「今日って天気いいですか?」 「さあ、どうでしょう」 「外に出たいな」 「いけません」 「リトさんも座りませんか?」 「私のことはどうかお気になさらず」    会話は全くもって続かない。  家族とハル以外の人と会話なんてあまりしてこなかったせいか何を話せばいいか全くわからない。 (き、気まずい……)  会話をしようにも話題が見つからないし、リトさんもあまり喋る人ではなさそうだし。  こちらが質問してもはぐらかされてしまう。 (手強いな……)  どうにかして、話題を見つけようと雪兎は考えを巡らせていた。

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