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第75話 外の世界

 到着したエレベーターに乗り込んで京極さんが1階のボタンを押す。  エレベーター内は僕と京極さんの二人きり。  気まずい沈黙が流れる。  苦手な人と二人きりなんて、どうしたらいいかわからない。 (お願い、早く着いて……)  そう心の中で願うばかり。  エレベーター内でも抱かれたままの肩。  その手は離してくれそうにない。 (……まだかな)  目的の階に一秒でも早く着いて欲しくてたまらない。 「………………」 「………………」  エレベーター内は静寂に包まれていた。  僅かに聞こえるのはエレベータの稼働音だけ。  どちらも自分から話す方ではないし、何を話していいかすらわからない。  雪兎はようやく外へ出られることに気持ちが高鳴っていた。        *  *  *        ゆっくりと降下していく階数を目で追いながら、ついにその数が  5階      4階    3階    2階  そしてついに――    1階      そう表示され、開いたドアから見えたのは久しぶりの外の世界。  外は暗く、夜なのが一目でわかる。  高級感溢れるエントランスのような場所。 「ユキ、少しだけ待ってろ」  そう言って、京極さんが携帯で誰かと話している。  それはたった二言、三言ぐらいの短い通話。 「待たせたな。今、桐原を呼んだからそれまで待ってろ」  そう言って再び肩を抱かれ、ソファへと座らせられる。  桐原さんという言葉にすぐに反応してしまう。 「良かった。桐原さん、無事だったんだ……」  桐原さんを"呼んだ"というワードが気になるが。  彼が無事なことにホッと安堵していると―― 「――チッ、俺以外の奴の名前なんか呼んでんじゃねえよ」  隣でタバコの煙を蒸かしながら京極さんが苛立った声で言う。  心配するのは当たり前だ。  桐原さんだけが、僕をここから連れ出してくれる一人だったから。  それを、京極さんはアルファのオーラで威嚇して。  現に今も不穏なオーラを漂わせながら「俺以外の奴の名前なんか呼ぶな」と、なんとも心の狭い発言をしている。

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