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第85話 デコピン
真夜中の首都高は車通りが少なく、すぐに都内を抜け隣県へと入る。
こんな状況でも夜の景色は変わらず綺麗に見えた。
「雪兎くん、眠れそうなら寝ておいた方がいいよ」
先ほどからそう言って僕に寝ることを促す迅先生。
確かに眠たさはあるのだけど、気を張っているせいか寝付けない。
両親にも会えなかった不安から、今寝たら悪夢を見てしまいそうで怖いのもあるし、それに……。
「迅先生だって、ずっと運転してるじゃないですか」
「俺はいいのー、エナドリもキメたからね! こういう仕事は慣れてますから」
本当に、迅先生には救われてばかりだ。
今は勿論、初めて会った時だって。
京極さんに囚われていたあの場所から、僕を連れ出そうとしてくれて。
なのに、僕は……。
「ごめんなさい……」
「雪兎くん」
謝罪の言葉を口にすれば迅先生に冷たい声で名前を呼ばれて、そちらを向く。
――ペチンッ
そんな音と共に、おでこに痛みが走った。
「う、痛っ」
今、自分はデコピンせれたのだ。
「急に何するんですか!?」
おでこを抑えながら、怒った口調でそう言えば。
「ハハッ、なんだちゃんと反発できるじゃん」
「当たり前です! 僕を何だと思ってるんですか!」
未だお腹を押さえて笑っている迅先生。
僕はそんな迅先生を冷たく睨みつける。
「はー、笑った。だって雪兎くん全っ然反発しないし、すぐ謝るしー、ホントに子供か? って疑っちゃった」
「なっ! 僕だって怒るときは怒るし嫌な時は嫌って…………それに、すぐ謝るのは癖みたいなもので……子供じゃないです」
最後のセリフは尻すぼみになって迅先生に聞こえていたかはわからない。
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