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3:河童の決意
一緒に居てほしい、と金髪の人間に言われた。
あの泣いていた男にくっついて、この部屋にやって来て二週間くらい。
おいらは人間の世界を満喫していた。
美味しい野菜を食べて、お散歩をして、家の中では玩具で遊ぶ。
金髪は、おいらにずっと構ってくれて、おいらはとても幸せだった。
けど、そんなにずっとはこの部屋に居る事が出来ない事はおいらも分かる。
いくらおいらを見る事ができても、金髪は人間でおいらは妖怪だし、おいらは水場を離れる事は出来ないからだ。
今は雨がいっぱい振る季節だからまだ良いけど、雨の降らない時期になったらおいらのお皿が乾いてしまう。
(おいらは金髪が大好きだから、ずっと一緒に居てあげたいけれど沼には連れていけないよね)
人間が妖怪側で暮らすのはとても難しい。
おいらは今、あの泣き虫男にとても怒っている。
一緒に生活をしていて、二人が夫夫である事はすぐ分かったけれど、夫としての本分を全く持って果たせていないのだから呆れてしまう。
金髪への態度はつれないし、口を利くことも殆どないのだ。
金髪と生活を一緒にしている中で、金髪はぽつりぽつりと夫夫の事を話してくれるようになっていたのだけれど、その中で分かった事を纏めると、泣き虫男には本当に好きな相手が他に居たのに、金髪の項を噛んで番になった事で、仕方なく結婚したということ。
金髪は泣き虫男が昔から好きだったから、最初は嬉しかったけれど、赤ん坊を流産して徹底した冷たい態度を取られてしまうようになり、泣き虫男の家族からも疎まれた結果、金髪がかなり追い詰められている事が分かった。
その癖、泣き虫男は、夜中にこっそり帰って来ては、金髪の寝顔を確かめて頭を撫でている。
金髪が起きている時は、あんなに冷たいのに、その時の泣き虫男の表情はとても優しいのがおいらには解せないが、その表情はおいらの父ちゃんが母ちゃんを見る時にそっくりだった。
(そんな顔をするのに、なんで優しくしてあげないのだろう)
すごく謎だ。
正直、二人は何かすれ違っているような気もする。
金髪は、泣き虫男には他に愛人が居るとか、好きな相手がとかたまにぶつぶつ言ってるのだが、おいらは腐っても妖怪だ。
そういう気配は、すぐに分かるのだ。
そういう事をしている気配ではない。
(でも、これが苦しい原因なら)
――おいらは、妙薬の入った壺の蓋を開けると、一人ですやすやと寝ている金髪男の近くに寄って、薬を項の噛み後に塗り込んだ。
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