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5:西城誠一郎の衝撃
叱咤激励をされた俺は、それからは出来る限り春哉へと寄り添おうと努力をした。
春哉が起きているうちに帰るようになったし、会話も増えたように思う。
その頃から春哉の態度が変わった事もあって、俺は上手く行っていると思っていたのだ。
(こんなことならもっと勇気を出せばよかった……!)
時折笑顔を見せることがあったり、今まで籠りきりだった部屋から出て散歩に出るようになった春哉を見て、俺は愚かにも希望を抱いていたのだ。
――しかし。
深夜の帰宅途中、車を運転していて俺は感じたことのない悪寒と衝撃を感じた。
まるで、身体が捥がれるような痛みと、その後にやって来たのはとてつもない消失感だ。
慌てて帰宅したマンション。
春哉に何かあったのだと思い寝室に入ると、春哉は安らかに眠っていた。
見た感じ異常は何処にも見受けられない。
「良かった……。取り越し苦労だったか」
近づいて寝顔を見ながら、ほっとして息を吐いた俺だったが、しかし次の瞬間心臓が止まるような衝撃を覚えた。
寝返りをうった際に見えた春哉の項から、俺がつけた番の証である噛み痕が忽然と姿を消していたからだ。
慌てて、項へと振れるが、そこには傷は一切存在していない。
まるで最初からそんな痕は無かったかのように、つるつるとしている。
「な、んで……っ」
呆然とした俺の声が、深夜の寝室に空しく響いた。
その事実は、俺と春哉の絶対に切れない筈の絆が絶たれたという事を指していた。
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